Dynamic Composable Computingのプロトタイプに採用している「Composition Manager」。ユーザーが自分のノート・パソコンから利用したい付近のノート・パソコン内のリソースを選択するとき,ユーザーのパソコンに表示したアイコンから他のパソコンのアイコンに向い,マウスを使って線を引く。
Dynamic Composable Computingのプロトタイプに採用している「Composition Manager」。ユーザーが自分のノート・パソコンから利用したい付近のノート・パソコン内のリソースを選択するとき,ユーザーのパソコンに表示したアイコンから他のパソコンのアイコンに向い,マウスを使って線を引く。
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ユーザーが隣の3台のパソコンと接続して画像を表示させるデモンストレーション。ユーザーのパソコンに表示していたWeb情報および写真データを,隣の3台(つまり,計4台)合わせた仮想のディスプレイに表示させている。
ユーザーが隣の3台のパソコンと接続して画像を表示させるデモンストレーション。ユーザーのパソコンに表示していたWeb情報および写真データを,隣の3台(つまり,計4台)合わせた仮想のディスプレイに表示させている。
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DCCのプロトタイプ・ソフトウエアの概要
DCCのプロトタイプ・ソフトウエアの概要
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 米Intel Corp.は「Intel Developer Forum(IDF)Fall 2008」のセッションで,携帯機器を複数の機器に無線で接続して,新しいアプリケーションを作成する「Dynamic Composable Computing(DCC)」と呼ぶ研究開発プロジェクトのプロトタイプ・ソフトウエア技術の概要を公開した。2008年4月に開催した「IDF Spring 2008」でこの技術のデモを展示したが,今回のIDFでは一般参加者に初めて技術概要を説明したとする。

 同社によると,こうした技術は研究開発者の間で「Composition(合成)」と呼ばれているという。Web開発業界で「マッシュアップ」と呼ばれる,複数のWebアプリケーションから一つのアプリケーションを開発する発想に近い。Compositionの基本的な発想は,まず携帯機器で無線ネットワークを利用して近くの機器を発見し,続いてそれぞれの機器が搭載しているリソースを利用する新しいアプリケーションを動的に作成させるというもの。例えば,ビデオ・カメラからパソコンやテレビに接続すると,ビデオ・カメラ内の動画をパソコンで処理した後に,同動画をテレビに表示するといったことが可能になる。なお,こうしたアプリケーションでは,動画の処理から表示までをビデオ・カメラで操作する。

 DCCを実現するには,IEEE802.11nもしくはUWBといった高速無線LAN/PANの技術が必要という。「新しい無線ネットワーク技術なら,機器のIDだけでなく,機器に間するさまざまな情報を送信ができる。例えば,機器が提供可能のサービス情報を盛り込める」(Intel社,Intel Research,Principal EngineerのRoy Want氏)。無線ネットワークで伝送する信号に機器内のリソースの情報を盛り込むためには,標準化に向けた取り組みが必要になるとする。DCCでは,ミドルウエアのレイヤーにある「Composition Engine」が付近の機器とデータをやり取りする役目を担っている。

 今回のIDFでは,例えばDCCによって1台のノート・パソコンに表示した情報を周りの3台のノート・パソコンに伝送し,情報を表示させるデモンストレーションを披露した。それぞれのパソコン画面を合わせて一つの仮想画面とし,情報を表示させていた。このデモではIEEE802.11nを利用し,さらに機器のリソース状況の情報を伝えるために独自技術を用いたとする。

 Want氏によると,Intel社は現在,DCCの技術をオープンソースにして,MID(mobile internet device)のソフトウエア・プラットフォームに関するオープンソース・プロジェクト「Moblin.org」で公開することを検討している。