具体的には,米Hewlett-Packard Co.が全世界の41人の大学教授に対して「HP Labs Innovation Research Awards」と呼ぶ共同研究資金を拠出すると発表した(発表資料)。それぞれの教授に対して,特定のテーマについてHP社傘下の研究開発部門HP Labsとの共同研究開発を行う目的で1年間に10万米ドルまでの金額を与える。「この41人を選ぶために,我々は世界28カ国に存在する200以上の大学から寄せられた400以上の提案を12週間かけて検討した」(同社,HP Labs,Open Innovation Office,DirectorのRich Friedrich氏)という。

 41人の教授の中には,国立情報学研究所の根本 香絵氏も含まれる。今回選ばれた同氏の研究は量子コンピューティングに関連する「Distributed Quantum Information Processing and Hybrid Quantum Devices」という題名の研究である。「量子コンピューティングのこれまでの研究を見ると,現実的な成果を出している技術は少なかった。根本氏の研究は,真の量子コンピューティング・アプリケーションを実現できる可能性がある。この研究に資金を提供できることに私も喜んでいる」(HP社のFriedrich氏)。根本氏は英ブリストル市や米パルアルト市にいるHP社の研究者と共同で研究を進めるという。

 このほか,米Rochester Institute of Technologyの教授を務めるFrank Cost氏が進める「An automated framework for collecting, tagging, transforming, and publishing web repository content to unified print layouts」と呼ばれる研究も,今回HP社から資金提供を受ける研究テーマの一つである。この研究テーマはブログなどのオンライン媒体を,本や雑誌,電子ブックなどの媒体に変える技術という。

 知的財産権の扱いについては,共同研究を始める前にHP社と大学が保有する知的財産権はそのまま残す。共同で開発した知的財産権はHP社と大学が共同で保有することになる。