連載の最後として,既存のDRM技術の概要をまとめた。(本稿は,日経エレクトロニクス,2008年3月10日号,p.65から転載しました。内容は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)

 コンテンツを暗号化し,視聴が許可されたユーザーや機器だけがそのコンテンツを再生できるようにする——。デジタル・コンテンツに向けたDRM技術を簡単に言うと,こうなります。これまでコンテンツの提供者は,すべての流通経路でコンテンツを暗号化できる状況を目指し,様々なDRM技術を駆使して丹念に穴をつぶしてきました。


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 DRM技術は主に3種類に分類できます。一つは,光ディスクやメモリ・カードなどが持つID情報などで媒体を認証し,それに基づく鍵で媒体上のデータを暗号化する方式。DVD-RやSDメモリーカードに使う「CPRM」,次世代光ディスクに使う「AACS」などがあります。

 二つめは,デジタル・インタフェースや放送波などの通信経路を通るデータを,機器の認証に基づいて暗号化する方式です。国内の地上/BSデジタル放送が採用する「B-CAS」のように共通鍵を利用するもの,「DTCP」や「HDCP」のようにセッション用の鍵をその都度生成するものがあります。地上デジタル放送の「コピー・ワンス」は,ここまでの2種類の技術を連携させて実現しています。

 最後の一つはApple社のiPodが採用している「FairPlay」やMicrosoft社の「Windows Media DRM」のように,ユーザーや機器の認証に基づく鍵でコンテンツを暗号化し,それを格納したファイルを伝送する方式です。機器やユーザーがコンテンツを視聴する権限を持っているかどうかを,ファイルを開くたびに確認し,権限を持っているときだけ視聴できるようにします。


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―― 終わり ――