連続インタビューの最後の相手はFred von Lohman氏。非営利団体の電子フロンティア財団(EFF:Electronic Freedom Frontier)に所属する弁護士である。(本稿は,日経エレクトロニクス,2008年3月10日号,p.61から転載しました。内容は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)

Fred von Lohman氏 電子フロンティア財団 Senior Staff Attorney

ネット時代における表現や言論,情報アクセス,技術革新の自由や個人のプライバシーを守る目的で1990年に設立された非営利団体の電子フロンティア財団(EFF:Electronic Freedom Frontier)に所属する弁護士。
ネット時代における表現や言論,情報アクセス,技術革新の自由や個人のプライバシーを守る目的で1990年に設立された非営利団体の電子フロンティア財団(EFF:Electronic Freedom Frontier)に所属する弁護士。 (画像のクリックで拡大)

 DRMは多数の問題を起こし,一切役に立っていません。米国のDMCA(デジタル・ミレニアム著作権法)に含まれるDRM順守条項は,著作権とは無関係なガレージドアの電動開閉装置などの市場で健全な競争を妨げました。現状のDRMはハッカーの海賊行為を防げません。DVDのDRMが破られて何年もたちますが,映画スタジオの収入が大きな打撃を受けた様子はない。彼らのビジネスを私は心配していません。

 頭が切れるコンテンツ業界人は,DRMが海賊行為を防げないと知っていますが,デジタルAV機器の設計を意のままにする法的な手段としてDRMが役立つと考えています。DRM搭載機器を製造する際にメーカーはDRMを管理する標準団体や企業からライセンスを受ける必要があります。この中に,コンテンツ業界が望まない方向の技術開発をやめる条項を盛り込む。自らは技術開発のリスクを一切負わず,技術を支配するというわけです。

 CDの時代は,音楽をコピー制限のないMP3形式などに変換することに法的な制限がなかった。この結果,家中に音楽をストリーミングする機器などが登場しました。ですが今は(DMCAによってCSSの解除は違法なので),DVD向けの同様の機器は成り立ちません。

 流通経路を分析するための情報を電子透かしに組み込んだコンテンツは,プライバシーの問題を起こす可能性があります。また,コンテンツ業界がユーザーを攻撃する口実になりかねないので原則として反対です。ただし,プライバシー保護を保証した上で,広告収入を決めるためにコンテンツの再生回数を確認するといった用途に使われるなら,一考の余地はあるかもしれません。(談)

―― 次回へ続く ――