「世界中の情報を整理して検索できるようにする」ことを社是とするGoogle社にとっては,何としてでも主導権を握りたい事業のはずだ。Google社だけでなく,メディア複合企業である米News Corp.の「MySpace」,映像検索サービスを提供する英Blinkx社,音楽CDを中心に大量のメタデータを保有する米Gracenote Corp.なども,映像を検索キーにして特定するためのデータベースを持ち始めている(図9)。
今後こうした企業間で,熾烈な主導権争いが繰り広げられるだろう。また,メディア企業やクリエーターが共同でデータベースを構築する可能性もありそうだ。現時点ではこうした取り組みは始まっていないが,「コンテンツ立国」を目指す日本にとって欠かせない要素のはずだ。
これまでのコンテンツ配信の主役はパソコンだった。Apple社がApple TVやiPhoneでコンテンツを直接購入できるようにしたり,国内のデジタル民生機器メーカーがテレビの「アクトビラ」対応を着々と進めたりと,デジタル民生機器が次のコンテンツ配信端末になることは間違いない。
そのときに,単にコンテンツの配信を受けられるだけの機器では差異化ができなくなる。新しいDRMの仕組みを提案するのと同時に,自社の機器ならではの連携をサービス事業者やメディア企業と考えていくことが勝負どころになるだろう。「X社のテレビを持っていたら,この動画共有サイトで興味を持ったコンテンツの本編を2割引で購入できます」「Y社の携帯型メディア・プレーヤーなら,パソコンで『お気に入り』に設定した動画を1クリックでダウンロードできます」など——。機器の可能性が大きく広がる。
―― 次回へ続く ――