前回は,ダビング10延期の原因になった,「iPod課金」をめぐるメーカーと権利者の議論を整理しました。今回は,YouTubeなどの動画共有サイトや,ユーザーが作成したコンテンツ(UGC:user generated content)の隆盛にまつわる争点を取り上げます。

 みなさんは,話題になったテレビ番組を見逃していたときにどうしますか?あらかじめ録画してあればいいのですが,そう都合よくいかないことが普通です。そんなときにYouTubeなどの動画共有サイトで検索してみる方は,かなりいるのではないでしょうか。

テレビ番組などの映像の著作権者は,動画共有サイトで番組を公開することを普通は認めていません。YouTubeを運営する米YouTube,LLCは,著作権者の権利を侵害しているとして,法律違反に問われないのですか?

 YouTube社が運営しているのは,ユーザーが自由に動画を投稿し,みんなで共有できるようにするWebサイトです。このような場所に,著作権者の許可なく動画を投稿するユーザーの行為は著作権法違反です。ただし,YouTube社のような動画共有サイトの運営者が責任を問われるかどうかは,サーバーが置かれている国の著作権法によって微妙に異なります。

 YouTube社がサーバーを置いている米国では,著作権侵害に問われないというのが,YouTube社の見解です。これまで同社は,著作権者の指摘を受けて問題があるコンテンツを随時削除したり,問題があるコンテンツを自動認識して削除する技術を開発したりしてきたからです。このような努力によって侵害を免責されるという主張の根拠は,米国で2000年に施行された法律にあります注1)

注1) 2000年に施行されたデジタルミレニアム著作権法(DMCA)にある,「Notice and Takedown」という規定がそれです。サービス提供者に侵害通知の窓口を設ける義務を課し,申告があった場合は当該のコンテンツを削除できるというものです。詳しくは,ITproで連載中の『北岡弘章の「知っておきたいIT法律入門」』 の記事「動画共有配信サービスと法的問題(1)YouTubeに見る著作権侵害免責への取り組み」をご参照下さい。

 ただし,YouTube社の主張に納得せず,努力が不十分であると考える著作権者もいます。例えば米Viacom Incは,2007年3月に著作権侵害でYouTube社を訴えており,現在も係争は続いています。YouTube社の現在の努力が十分といえるかどうかは,結局は裁判の決着を待つしかありません。