消費電力低減が大きな課題に

 こうしたサーバー向けの製品に比べると,「Celeron(やCeleron D)」は比較的マシだった。基本は,Pentium 4のL2キャッシュを削減にFSBを制限した製品である。こちらは順調に製品展開が進んだ。また,モバイル機器向けに「Mobile Pentium 4」や「Mobile Pentium 4-M」という製品もリリースされたが,Mobile Pentium 4-MはともかくMobile Pentium 4は重量3Kg前後の巨大ノート型パソコン向けの製品で,消費電力もMobile Pentium 4 548(3.33GHz)でTDP(Thermal Design Power:熱電力設計)が88Wと,到底モバイル向けといえるようなものではなかった。

 こうした状況では,組み込み向けへの展開が難しくなる。コストを考えるとCeleronやCeleron Dが望ましいが,これらはいずれもTDPが65Wとかで,Pentium III世代のほぼ倍である。ファンレスなど当然不可能で,空冷ファンは必須。しかもかなりの冷却風量が要求される。こうした状況はIntel社自身もわかっていたようで,Xeon DPをベースに,もっぱら動作周波数を抑える形でXeon LV(Low Voltage)をリリースする。2002年9月にPrestoniaベースの製品をまずリリース。ついで2004年6月には2.8GHzの製品をリリースする。これらは何れもTDPが35Wの枠に収まるもので,通信機器関係(もっと正確に言えば,Advanced TCA(ATCA)対応のブレードサーバー向けに展開され,一定のシェアは何とか確保する。ただその分,性能は抑え目になる。相変わらずそれなりの熱容量を持つ空冷ファン付きヒートシンクが必須とあっては,利用できる用途はかなり限られる事になった。

組み込みへの道が開ける

 当然こんな製品はモバイル向けには利用できず,2002年あたりまで引き続きMobile Pentium IIIが市場に投入されていた。ただし,こうした消費電力と発熱の問題に対して,Intel社も速くに手を打っていたようだ。Intel社は1998年頃からイスラエルのR&Dセンターで,Pentium IIIをベースにモバイル向けの低消費電力プロセッサの開発を始めており,これが2003年に「Banias」というコード名で知られる「Pentium M」として発売されることになった。こちらは従来のMobile Pentium IIIとほぼ同等の消費電力で,Pentium 4に匹敵する性能を叩きだす事に成功する。Pentium Mの登場と同時に始めた「Centrino」というブランディングの効果もあり,Pentium M搭載ノートは急速に普及する。Pentium Mは同時にLV/ULV(低電圧/超低電圧)の製品も用意しており,またそれぞれにCeleron(Celeron Mと名づけられた)を提供したこともあり,組み込み用途では数多く採用された。


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 これに引き続きIntel社は2004年に90nmプロセスを採用。TDPをほとんど変えずに高速動作する「Dothan」を市場に投入。さらに2006年にはデュアルコア製品である「Yonah」こと「Core Duo」と,これをシングルコア化した「Yonah-1P」こと「Core Solo」をリリースする。デュアルコア製品そのものは,Pentium 4のMCM品であるSmithfieldが最初の製品であるが,Yonahは1つのダイに2つのCPUコアと共有L2キャッシュを搭載しており,ダイ単位で見れば初のDual Core製品ということになる。Yonahのコアの詳細は明確にされていないが,Pentium Mをベースに若干の改良を施したものとされている。このYonahは,殆どスペックを変えずに「Sossaman」としてXeon LVに採用された。

 このYonahをベースとしたものが,その後Core 2としてIntel社の全製品ラインに採用され,NetBurstことPentium 4の製品展開は急に減速した。ただ組み込み向けに関して言えば,ほとんど利用されていなかったことから,これは大きな問題ではなかった。むしろPentium Mから続く製品ラインがメインストリームになったことで,むしろ望ましい展開になったと言えよう。

 余談ながら,Dothanの動作周波数と電圧を落とし,TDP 3Wで動作できるようにした製品が,LPIA(Low Power on Intel Architecture)として別種の製品ラインで提供されているこの製品ラインは,45nmプロセスの時代になってから急速に展開が進むことになる。