大口DRAM価格の上昇で赤字幅は減ったが,第2四半期は依然不透明とする
大口DRAM価格の上昇で赤字幅は減ったが,第2四半期は依然不透明とする
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 エルピーダメモリは2008年8月7日,2008年度第1四半期(2008年4~6月)の決算を発表した(リリース説明会資料)。売上高は対前年同期比で横ばいの1092億円,営業損益は同194億円悪化して156億円の赤字になった。パソコン向けDRAMの大口価格が上昇したことで,前四半期に比べると赤字幅は103億円改善し,単月では2008年6月に損益分岐点に達するなど,回復傾向が見られた。しかし,7月以降は再び業績の不透明感が強まり,「第2四半期の黒字化は難しい」(同社)とする。

 第2四半期のDRAM価格は,パソコン向けの大口価格がほぼ横ばいに推移するものの,スポット価格は下落傾向にある。DRAMへの需要は伸びるものの,市場の在庫が想定以上に多く,不透明感が強いとしている。一方,携帯電話機やデジタル家電向けに付加価値を高めた「プレミアDRAM」は,第2四半期には回復に向かうとする。

 市況の不透明感が強まっていることから,微細化に向けた投資にも変更が生じている。広島工場では当初,70nm世代から65nm世代をスキップして54nm世代に移行する方針だったが,まずは65nm世代への転換を進めることになった。2008年度に1000億円を投じ,300mmウエハーで3万6000枚/月分を65nm世代に転換する。台湾Rexchip Electronics Corp.の「R2ファブ」に関しても,当初は54nm世代を計画していたが,まずは65nm世代から立ち上げるという。R2ファブ向けには2008年度第4四半期に200億円を投資し,付帯設備やクリーン・ルームを建設する。

 なお,65nm世代は6F2セルを新たに導入することで,70nm世代と同じリソグラフィ技術を使いながら,セル面積を33%縮小する。これに対し,54nm世代では新たに液浸リソグラフィ技術とCu配線技術を導入するため,投資負担が重い。ただ,液浸リソグラフィとCu配線は今のところ問題なく立ち上がっており,2008年9月には試作,2009年1~3月期には量産に着手する。

 エルピーダメモリが中国の蘇州に設立するDRAM生産合弁会社(関連記事)に関しては,工場運営に精通した現地企業と協力する方針を示した。現地企業の名前はまだ公表できないという。Rexchipの工場運営を台湾Powerchip Semiconductor Corp.が支えたように,中国でもパートナー企業の力を利用する考えである。