産業技術総合研究所 太陽光発電研究センターによる年に一度の成果報告会が,2008年7月28~29日に東京・台場の日本科学未来館で開催された(Tech-On!関連記事1 ,2)。招待講演を含む18件の講演や37件のポスター発表,パネルディスカッションが行われた。

 発表内容を大きく分けると,(1)高変換効率を実現する技術,(2)低コスト化・高生産性を実現する技術,(3)付加価値を産み出す技術,(4)測定技術・システム構築の検討の四つになる。

 (1)の高変換効率に関しては,高度秩序構造を有する薄膜多接合構造で2015年に変換効率25%以上を目指す技術,量産タイプのCIGS(Cu,In,Ga,Se)型太陽電池サブモジュールで15.9%を達成した技術,水素添加した酸化インジュームで近赤外領域の透過率を大きく改善した技術,p型半導体であるルブレンを使った高い光開放電圧を有する有機薄膜太陽電池などについての発表があった。

 (2)の低コスト化・高生産性に関しては,薄膜Si型太陽電池工場でモジュールコストを現在の1/3にする手法の検討,高圧枯渇法による微結晶Si薄膜の高速成膜が紹介された。(3)の付加価値を産み出す技術では,フレキシブルなCIGS型太陽電池で17.7%の効率を達成した「貼れる太陽電池」がある。

 (4)の測定技術・システム構築では,一次基準太陽電池セルの校正機関として,国際的なラボ認定を取得したことが紹介された。このほか,発電量の評価として,これまでの標準試験条件(STC)を補完する評価体系に加えて,発電量(エネルギー)による性能比較のためのベンチマーク方式の提案があった。さらに,太陽電池の普及に伴い,2030年時点で既存の発電システム中へ88GWまでの太陽光発電システムを導入できることを,需給バランスの観点から示した研究結果などが,今回の発表の目玉だった。