「きわめて残念な結果となりました」。東芝 代表執行役専務の村岡富美雄氏は2008年4月~6月期決算説明会の冒頭でこう述べた。売上高は前年同期比2.8%減の1兆6187億1900万円,営業損益は前年同期から450億円ほど悪化して241億7500万円の損失を計上,純損失は116億500万円(発表資料)。減収減益で赤字転落の厳しい内容になった。

 業績不振の理由について村岡氏は「半導体事業の悪化,その一言に尽きる」とした。半導体事業は売上高が前年同期比4%減の2915億円となり,営業損益は約540億円悪化して302億円の赤字に転落した。単価の下落,円高による為替差損,デジタル家電向けシステムLSIの売り上げ低迷,ソニーから買い取った長崎工場の立ち上げ費用を計上したこと(Tech-On!関連記事1)などが減益要因になった。

 赤字は7割強がシステムLSI,残りがメモリによるもの。半導体工場のほとんどで2008年1月~3月期並みの稼働率を維持したが,先端システムLSIを生産する大分工場内の300mmウエハー対応の製造棟は1月~3月期の80%から70%まで低下した。テレビやオーディオ向けの需要が期待に届かなかったという。

NANDフラッシュの増産計画に変更なし

 NANDフラッシュ・メモリは,ビット換算の出荷量は伸びたものの,平均販売単価は1月~3月期に比べて20%ほど低下した。7月~9月期も平均販売単価は4月~6月期比で15%ほど低下する見通し。NANDフラッシュ市場の充足率(需要に対する供給率)は「東芝で100%程度,業界全体ではその+5%程度」(村岡氏)という。こうした市況を受けて,提携先の米SanDisk Corp.は四日市工場への投資計画を遅らせる方針を発表したが(Tech-On!関連記事2),東芝は「投資計画に変更はない。生産能力増強のスケジュールも変更しない」(村岡氏)。同社は43nmプロセスへの移行を進めており,2008年9月末には43nmプロセスによる生産比率を50%まで引き上げる計画。微細化による低コスト化で単価下落を吸収する方針を維持する。

 全社の業績予測についても,東芝は2008年4月時点の予測を据え置いた。中間期(2008年4月~9月)で700億円の営業利益を計上し,通期(2008年4月~2009年3月)では増収増益になるとの予測だ。「厳しいターゲットになってしまったが全力を挙げて達成する」(村岡氏)。

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