予選の結果。異なる参加クラスを一度に掲載している。
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本選スタート直前の会場の様子
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レース中の太陽誘電ソーラーカー苦楽部の車「Aten-1」
レース中の太陽誘電ソーラーカー苦楽部の車「Aten-1」
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現在トップをゆく芦屋大学のソーラーカー(出走直前)
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 太陽電池を用いた自作車の耐久ラリー「2008 World Solar-Car Rallye(WSR)」(2008年7月25~28日,秋田県大潟村)では,太陽誘電のクラブ・チーム「太陽誘電 ソーラーカー苦楽部」(以下,太陽誘電)が参戦中である(第1報の記事)。ソーラーカー・ラリー参加歴が長い東海大学 工学部 電気電子工学科 教授の木村英樹氏によれば,「色素増感型太陽電池での参加は,こうした有名なソーラーカー・ラリーでは世界で初めて」であるという。

 会場には,太陽誘電と別の会社や大学で色素増感型太陽電池を開発している技術者,研究者も数人が駆けつけ,「我々が怖くてできなかったことをやってくれた」と感心する。色素増感型太陽電池,特にフィルムを基板に用いたものは一般には耐久性にまだ課題があり,ラリー参加中に発電機能を失ってリタイヤなどすれば,初参加という話題性の大きさがそのままイメージダウンの大きさに跳ね返りかねないためである。

 最終日(28日)を残した時点での中間結果をお伝えすると,まず,予選のタイム・トライアルでは,太陽誘電は全日本学生ソーラー&FCカーチャンピオンシップ(JISFC)も含めた全エントリー32チーム中,19位と中間的な位置につけた。ただし,この予選は400mを走るいわゆる「ゼロヨン」で,「太陽電池の性能よりはむしろ,太陽電池が発電する電力を蓄電するバッテリやキャパシタの出力,さらにはメカニカル部分の性能で決まる要素が大きい」(ある大会参加者)という。

 本選2日目を終えた時点での太陽誘電のソーラーカーの走行距離は,200km。これは,動力源に太陽電池だけを使い,しかも車体の大きさがほぼ同じという参加クラスの中で,出走8チーム中,5位である。本選1日目は終日ほぼ快晴で強烈な太陽光が照りつけた。2日目も朝から昼過ぎまではほぼ快晴と,曇天が狙い目だった太陽誘電のソーラーカーには明らかに不利な状況の中,健闘していると言える。

 一方,色素増感型太陽電池の耐久性にはやはり課題がある。本選1日目で既に,太陽誘電のソーラーカーが搭載した366枚の太陽電池セルのうち,電解液の液漏れを起こすなど明らかに動作しなくなったセルが1~2枚出てきた。本選2日目後の時点でそれは数枚に増えた。停止せずとも,なんらかの性能劣化を起こしたセルは「全体の半数近い」(太陽誘電の関係者)と満身創痍である。「性能が劣化していないセルと劣化したセルの差が激しい。性能劣化の原因は分かっているので(今後の色素増感型太陽電池の開発には)問題がない」(太陽誘電の関係者)。

 ただし,目の前の問題は,本選3日目に果たして最後まで走りきることができるかどうか。3日目は朝から雨の予報だが,熱に弱い色素増感型太陽電池にとってはむしろよい条件になりそうだ。

暫定トップは人工衛星用の太陽電池を搭載

 ちなみに,すべての参加クラス中での現時点のトップは,JIFSC側で参加した芦屋大学のチーム「芦屋大学ソーラーカープロジェクト」である。本選2日目まで1025kmと他チームに比べて断突に長い距離を,約53~75km/hで走っている。芦屋大学は1993年から続くこの大会で「第1回から,2回ほどの例外を別にして毎回参加している」(同大学 経営教育学部 准教授の盛谷亨氏)。海外のソーラーカー・ラリーでも何度か優勝しているという。

 同大学のチームの車が搭載している太陽電池は,人工衛星向けに製造された,GaAs系の3接合型と呼ばれるタイプ。こうした太陽電池は一般の結晶Si系太陽電池の100倍ほども高価で,正規に購入すれば1千万円以上する。芦屋大学の場合,「2005年に米国のメーカーから規格外品をゆずってもらった」(盛谷氏)。現在,モジュール変換効率は25%,ソーラーカー全体の出力は最大1930Wであるという。

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