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 村田製作所は,大電力用の大型積層セラミック・コンデンサが電動スクーターに採用されていることを「AT International 2008」(7月23~25日,幕張メッセ)で明らかにした。スクーターは,米Vectrix Corp.が2007年夏に発売したプラグイン・ハイブリッド式の車種。北米では9395米ドルで市販されている。

 村田製作所のコンデンサは,インバータにおける平滑化に向けた基板(米Perker Hannifin Corp.製)に4個搭載された。IGBTが生み出すサージの抑制に使う。

熱に強くて省面積

 こうした用途では「従来,フィルム・コンデンサやAl電解コンデンサを用いるしかなく,熱による劣化が課題になっていた。フィルム・コンデンサはフィルム自体が有機物であり,Al電解コンデンサは電解液を封止するために有機物が必要だったからだ。セラミック・コンデンサはすべて無機物なので耐熱温度が高い」(説明員)。

 加えて,平滑化回路の実装面積を減らせる利点がセラミック・コンデンサにはある。単位体積当たりの容量は,フィルム・コンデンサが1.2μF/cm3。アルミ電解コンデンサは1.89μF/cm3。セラミック・コンデンサは2.4μF/cm3という。許容リップル電流が1.56A/cm3と大きいこともセラミック・コンデンサの特徴である。フィルム・コンデンサより1ケタ,Al電解コンデンサより2ケタ大きい。

 肝心の価格については「現時点では確かにフィルム・コンデンサやAl電解コンデンサよりも高価だが,耐熱性や外形寸法の小ささを生かして量産効果をどんどん高めていきたい」(説明員)という。

大型でもヒビを回避

 今回展示したセラミック・コンデンサは,外形寸法が32mm×40mm×4mmと非常に大きい。「当社がシリーズとして販売していたセラミック・コンデンサの実装面積は,最大で5.7×5.0mmだった」(説明員)。実装面積で比べると,今回の品種は87倍大きいことになる。

 セラミック・コンデンサを大型化する上での課題は,実装基板の熱収縮や熱膨張によって,ヒビが発生することだった。村田製作所は,この解決に向けて端子構造を変えた。

 セラミック・コンデンサは通常,プリント基板の上に張り付いているが,今回は金属端子を用いて実装基板からコンデンサ本体を離した。実装基板の収縮や膨張,たわみは,金属端子が吸収する。金属端子はガルウィング形で,バネ性を備えている。

 ガルウィング形金属端子とコンデンサ本体の外部電極は,はんだを用いずに,線膨張係数が外部電極とほとんど同じ材料を介して接合した。「はんだを介していては接続信頼性が不足してしまう。はんだを使わなかったことで,セラミック・コンデンサの基板実装にリフローを適用できる利点も生まれた」(説明員)という。

 展示品の定格電圧は,直流200V。許容リプル電流はrms値で25A。実効容量は直流150V印加時に38μF。静電容量は52μFである。

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