Qikのクライアント・ソフトウエアを使い,携帯電話機で動画を撮影しているところ
Qikのクライアント・ソフトウエアを使い,携帯電話機で動画を撮影しているところ
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 米国のベンチャー企業Qik, Inc.は,携帯電話機で撮影する動画をインターネット上で生放送できるサービス「Qik」のベータ版を公開した(同社のブロッグ記事)。Qikのサービスは,携帯電話機に搭載する専用クライアント・ソフトウエアを使い,同社が運営するサーバーを介して動画をインターネット上に生中継するというもの。同社は2007年12月に,特定ユーザーに向けてアルファ版のサービスを公開していた。同サービスを用いると,ユーザーは携帯電話機を使って現在撮影中の動画を簡単に世界に公開できることから,業界の注目が集まっていた。一般ユーザー以外には,英British Broadcasting Corp.(BBC)やThe Los Angeles Times,The NBC Television NetworkなどのメディアがQikを採用したことがある。

 Qikサービスの利用概要は次の通り。まずユーザーは,SymibanもしくはWindows MobileといったQik対応のOSを搭載する携帯電話機に,専用クライアント・ソフトウエアをダウンロードし,インストールを済ましておく。動画を公開する際は,クライアント・ソフトウエアを起動し,撮影している動画をQik社のサーバーに転送する。続いて,同社のサーバーから動画をインターネット上で再放送させる。Qik社は,同社が扱う動画を再生できるFlash対応の専用プレーヤーも開発済みである。これには,動画を見ているユーザーと携帯電話機で動画を撮影しているユーザーの間でチャットができる機能もある。チャット機能は日本語のテキストにも対応しているため,同社によれば同サービスの利用者には日本のユーザーもいるという。

 今回のベータ版の公開により,Qikサービスを多くのユーザーが自由に利用できるようになった。ユーザーが利用しているネットワークの通信速度によるが,携帯電話機から動画をWebに公開するまでの遅延時間は0.5~3秒である。ベータ版では,撮影した動画を見られるユーザーを限定する機能を追加した。さらに,動画を専用サイトに蓄積できる機能や,Webサイトに専用プレーヤーを組み込める機能も設けた。

 Qikでは,携帯電話機で撮影可能な動画の画質や無線ネットワークの通信速度を考慮し,動画を放送するまでの遅延時間を減らすための工夫をしている。「我々は,動画ストリーム下のネットワーク層と動画ストリーム上の層で独自アルゴリズムを適用している。このアルゴリズムでは,動画ストリーム内のフレームにある顔などのオブジェクトを検知して,オブジェクトの質を維持しながら動画に必要な解像度や転送ビット・レートを最適化する指示を出す」(同社,co-founderのBhaskar Roy氏)。クライアント側では最適された動画を専用のデータ・ストリームを使って変換し,サーバー側ではこのストリームをFlashなどの動画符号化技術を用いてさらに変換する。Qikサービスを使うには,携帯電話機にはクライアント・ソフトウエア用に約180Kバイトのメモリ容量(Symbian対応版)と,動作周波数が最小でも150MHzあるマイクロプロセサが要る。今後の数ヶ月内に,J2ME対応のバージョンを出荷する予定である。

 Qik社によれば,同社サービスのビジネス・モデルはまだ定まっていないという。「だが,少なくともユーザーの動画に広告を追加する予定はない」(Roy氏)とする。

Qikのシステム図。図中にあるように,Qik社は少なくとも#60/989,711や#60/989,716の米国特許を申請中。
Qikのシステム図。図中にあるように,Qik社は少なくとも#60/989,711や#60/989,716の米国特許を申請中。
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