厚生労働大臣の舛添要一氏は2008年7月22日,閣議で「平成20年版 労働経済の分析(労働経済白書)」を報告した。同白書では,成果主義導入を中心した雇用管理の見直しに多くの問題があるとの見方を示した。

 企業の多くは1990年代半ば以降の雇用管理の見直しで,パートや派遣,請け負いなど正社員以外の雇用を増やす一方,正社員に対しては業績・成果主義を導入したと現状を分析している。その上で業績・成果主義に基づく賃金制度の導入に対しては,「コスト削減志向が極めて強いものであった」と指摘。さらに「新規学卒者の計画的な採用や,適切な配置,育成に向けた努力を怠る」などの問題点があったとの認識を示している。

 具体的には,「仕事のやりがい」や「収入の増加」「休暇の取りやすさ」「雇用の安定」といった仕事に対する勤労者の満足度が,1990年代半ば以降,長期低落傾向にあることを明らかにした(直近では今回の景気回復で若干改善している)。例えば,「仕事のやりがい」に対する満足度は,1995年には20%を超えていたが最新の2005年は16.6%に低下している。この満足度の低下と,1990年代半ば以降の雇用管理の見直しの直接的な因果関係は指摘しないが,この二つが同時に起こっていることを白書は強調している。

 満足度の低下に関して,企業と勤労者の間で,大きな現状認識のギャップがあるとも指摘する。勤労者に対する調査では「満足感が低下している」と感じている人が「そう思わない」人よりも多く,企業に対する調査では,逆に「そう思わない」とする回答が多い。この結果を踏まえて「労働者が,能力開発機会が不十分だと考えていたり,仕事を通じた個性の発揮ができていないと考えていることついて,企業側は十分な認識を持っていない」と分析している。成果主義が必ずしもうまく機能していないとの指摘が多くされているが,今回の労働経済白書は,こうした指摘と合致する内容になった。