農業技術に関する展示会「アグロ・イノベーション2008」が7月16日に幕張メッセで開幕した。エレクトロニクスを応用した植物向けの計測技術や新しい栽培技術が多数展示されている。

 愛媛大学は,植物に含まれるクロロフィルの光合成能力を画像として計測できる技術を展示した。植物の表面に強度を変えた青色光を2回照射し,吸収されなかった反射光の情報から光合成能力を算出する。これまでは温度や湿度といった環境情報を計測し植物栽培に生かすアプローチが多かったが,植物の生態情報を直接モニタリングすることで,きめ細かい栽培が可能になるという。

 大阪府立大学は,光の照射時間を変えることによって,植物の時計遺伝子の活動を制御する技術を紹介した。まだ光照射の基礎アルゴリズムを開発した段階だが,今後,時計遺伝子をうまく制御することで,植物の成長を1.2~1.3倍に促進できる可能性があるという。奈良先端科学技術大学院大学に建設中の植物栽培施設を利用し,今後実証実験を進める。

 トプコンは,植物に含まれるN(窒素),P(リン),K(カリウム)の各成分を計測しながら,必要に応じて肥料を自動的に散布できるシステムを参考出展した。植物に光を当て,反射光のスペクトルを解析することでN,P,Kの各成分を計測する。海外の大規模農場を前提に構築したシステムではあるが,技術自体は日本でも利用できる可能性が高いとする。

 イーラボ・エクスペリエンスは,植物の状態をカメラや各種センサで監視する「フィールド・サーバー」の廉価版を展示した。これまでは45万円と高かったが,カメラ機能やネットワーク機能を簡略化することで価格を25万円に下げた。発売は8月以降になる見込み。今後,さらなる低コスト化を進め,2009年には5万~10万円を目指す。

 ランドマークは,自動車1台分ほどの大きさに抑えた超小型植物工場のアイデアを提案した。寸法は2.3m×2.7m×5m。この中に同社が提供しているLED照明器具や,他社の環境制御装置を集積する。わずかなスペースで植物栽培が可能であり,栽培能力はレタス換算で1000個/月を見込む。価格は200万~300万円を目指している。