ボディ構造の特徴


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 前ページのイラストで示したように,本体の天板がメイン・シャーシとなっていて,ここにキーボードやメイン基板,HDD,Liポリマ2次電池などが固定される。天板はアルミ合金の鋳造品をフライス加工したもののようだ。加工個所は非常に多く,かなりコストがかかっていそうだ。

 天板は薄く,開口部も多いため曲げ剛性が低い。だが,ここに柔らかな曲面で構成されている底板を被せて10本のネジで固定すると,飛躍的に曲げとひねりに対して強くなる。天板と底板は,わずかに反った状態に作られているようだ。ネジ止めすることでテンションがかかった状態で平らになり,多少剛性が増すのかもしれない。

 ディスプレイ部の背板は0.8mmのアルミプレス品で,それだけでは剛性が低いため,周辺部にマグネシウム合金製のフレームを接着している。

 ディスプレイのラッチ機構は一般的なフック式ではなく,ディスプレイ部のフレームに埋め込まれた磁石の吸着力を利用するもの。もちろん外部からはラッチ機構が見えず,たいへんスマートだ。本体天板の裏には,磁石と重なる位置に鉄片が張り付けられている。また,磁石の接近をホール素子で検知することで開閉検出としている。

 分解されたMacBook Airの部品を見て,いくつか「これは!」と思ったことがある。キーボードの裏に,ハードディスク固定用の金属製の小さなステーがネジ止めされるのだが,このステーの全面に0.8mmの小穴が開けられている。ステーの質量はわずか1.2gであり,小穴による軽量化は1gにも満たない。完全に設計者の趣味で開けられた穴としか見えない。

 液晶パネル画面の上部に照度センサ,マイク,カメラの穴が並んでいるのだが,前2者は直径0.025mmという小穴を多数開けたものだ。プレス加工では難しそうだし,ドリルで開けているのだろうか?

 この記事の作成のためにMacBookAirを3次元ソフトでモデリングしたが,作業中に感じたのは「コストを度外視しても最高に美しいノート型Macを作りたい」というApple社の強い意思と,圧倒的なデザイン・センスの良さだった。

著者略歴
回路設計,メカ設計,プログラミングの経験を生かし,ハードウエア解説記事を得意とするテクニカルライター・イラストレーター