米Apple Inc.は,製品の製造を外部に委託している。委託先の1社が,台湾Hon Hai Precision Industry Co., Ltd.(鴻海精密工業,通称Foxconn)である。Apple社が,最新の製品を安く大量に提供できるのは,Hon Hai社をはじめとするEMS(electronics manufacturing services)企業のおかげといえる。中でもHon Hai社は,他を圧倒する爆発的な勢いで成長を続けている。本連載は,それまで謎に包まれていた同社の本質に迫った,『日経エレクトロニクス』,2006年7月31日号の特集「鴻海Hon Haiは敵か味方か」の全文を再掲載したものである。掲載から2年たった今でも,同社の勢いは全く衰えていない。(以下の本文は,『日経エレクトロニクス』,2006年7月31日号,pp.88-90から転載しました。メーカー名,肩書,企業名などは当時のものです)

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Credit Suisse First Boston社の調査や取材結果を基にした。


 中国・深センの中心地を過ぎ,海を左手に高速道路を一路西へ。すると,その「街」は突然現れる。

 外壁をオフホワイトに塗った幾つもの真新しい工場と,そこで働く人々の居住棟,商業施設。70棟を超える巨大な建物が見渡す限り続く。その間を走る片側3車線ほどの道路では,荷物を満載したトラックがひっきりなしに往来している。敷地内で働く従業員は10万人を超えるという。その広さ故に,ゴルフ場のように電動カートに乗って建物の間を移動する人々もいる。ここは,台湾Hon Hai Precision Industry Co.,Ltd.(鴻海精密工業,通称Foxconn)の深セン龍華工場である。