図1 JEITAの見解を説明する,著作権専門委員会 委員長の亀井正博氏(左)と常務理事の長谷川英一氏(右)
図1 JEITAの見解を説明する,著作権専門委員会 委員長の亀井正博氏(左)と常務理事の長谷川英一氏(右)
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図2 「ユーザーの複製行為が私的録音録画の範囲を超えないようにふたをかぶせる」ものが著作権保護技術であるという権利者団体の主張にも反論した。採用した著作権保護技術が許容するコピーの数によって私的複製の範囲が変わってしまうという考え方が著作権法30条の解釈として正しいか,小委員会などでの学識者の意見を待ちたいとした(JEITAの資料)
図2 「ユーザーの複製行為が私的録音録画の範囲を超えないようにふたをかぶせる」ものが著作権保護技術であるという権利者団体の主張にも反論した。採用した著作権保護技術が許容するコピーの数によって私的複製の範囲が変わってしまうという考え方が著作権法30条の解釈として正しいか,小委員会などでの学識者の意見を待ちたいとした(JEITAの資料)
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 電子情報技術産業協会(JEITA)は,2008年7月10日に開催された私的録音録画小委員会の今期第3回会合の直後に,JEITAの見解を説明する記者説明会を開いた。第3回会合で「JEITAの意見は2年前と変わっていない」という指摘があったことに対して(Tech-On!の関連記事1),「そもそも我々の主張は,議論なしで放置されてきた。それなのに『長い間やってきたんだからこの辺りで収めよう』と言われても合意はできない」(JEITA 著作権専門委員会 委員長の亀井正博氏)などと説明した(図1)。

 この記者説明会でJEITAは,小委員会の第3回会合で配布した資料を基に,同年5月8日の第2回会合で文化庁が提示した改定案(Tech-On!の関連記事2)に対するJEITAの見解を説明した。(1)著作権保護技術を利用している場合にまで補償金の請求権を与えることは著作権者らの二重利得に該当する可能性が高い(図2),(2)文化庁案は補償金を縮小する方向としているが「権利者の要請による著作権保護技術の場合は補償金が不要」「現状ではパソコンなどの汎用機器を対象とすべきでない」といった表現では縮小の道筋が見えない,(3)タイムシフトやプレースシフトには補償金が不要と考えるためHDDレコーダーや携帯型音楽プレーヤーなどの一体型機器は対象とするべきではない,(4)クリエーターへの適正な対価の還元方法は補償金制度に限定されないはずである,(5)購入した音楽CDのプレースシフトには補償金の必要性がなく,レンタルCDからのコピーについては権利者,事業者,ユーザー間での契約でコピーの対価を徴収できるはずである---といった点が文化庁案に合意できない理由であるとした。

 この記者説明会でJEITAは,「歩み寄る可能性を否定しているわけではない。『この部分の議論がなされていない』と指摘しているだけ」(常務理事の長谷川英一氏)とし,合意のためにはJEITAが過去から一貫して主張してきた意見についてきちんと議論する必要があるとした。「我々は『適正な対価』が補償金だけとは思っていない。契約と技術によって対価が還元される新しいビジネス・モデルを考えるべきではないか。メーカーはそのための技術開発というかたちで協力していく」(長谷川氏)。

 またJEITAは,小委員会の第3回会合で権利者側の委員が提示した「支払義務者をメーカーにする」という意見を否定した。「例えば,メーカーが補償金の支払義務者となっているドイツは『メーカーが著作権侵害に寄与している』ことが論拠となっている。日本は,私的複製を著作権法で認めている。現行の著作権法の下ではメーカーは適法行為に寄与しているだけだ。支払義務者になることにはこれまでも反対してきた」(亀井氏)。