北海道洞爺湖サミットで主要8カ国(G8)首脳は2008年7月8日,2050年までに世界全体の温室効果ガスを半減する長期目標に合意した。正確にはサミットの首脳宣言に「2050年までに世界全体の排出の少なくとも50%削減を達成する目標というビジョンを、UNFCCC(国連気候変動枠組条約)の全締約国と共有し、かつ、この目標をUNFCCCの下での交渉において、これら諸国と共に検討し、採択することを求める」(外務省仮約)と盛り込まれた。

 表現が複雑になっているのは,温室効果ガスの半減を先進国だけで目指すのではなく,中国やインドなど180カ国以上が参加している国連気候変動枠組条約の下で行なうことや,50%削減について「達成する目標というビジョンを共有」するなど外交文書特有の解釈の余地を持たせているため。少なくとも日本を含むG8各国は50%削減の達成に向けて具体的な行動を取ることが必要になる。また基本枠組みとなる国連気候変動枠組条約では「共通だが差異のある責任」という表現で,これまでの多くの温室効果ガスを排出してきた先進国がより積極的な責任を果たすことが合意されており,世界で半減ならG8はさらに大きな削減が求められることになる。これは2050年に現状比6~8割減を目標とする「福田ビジョン」とつながっている。

 このほか成果文書の注目点は,長期目標だけでなく「我々各国(G8各国:編集部注)が、(中略)排出量の絶対的削減を達成するため、野心的な中期の国別総量目標を実施する」「セクター別アプローチは、各国の排出削減目標を達成する上で、とりわけ有益な手法である」--など。セクター別アプローチとは,電力や鉄鋼,セメントといった温室効果ガス排出量が多い産業分野(セクター)ごとに基準を決め,エネルギ利用効率(排出原単位)の改善を進めていくもの。日本企業の省エネ技術が生かせるとされる。