永遠に議論を続けようとは思っていない

 Blu-ray Disc機器の大半はDVDの機能を併せ持つ「コンパチ機」だ。そのためBlu-ray Disc機器としてではなく,DVD機器として補償金制度の対象に入っており,(メーカーはユーザーに代わって)補償金を既に支払っている。Blu-ray Disc機器は一般にDVD機器より価格が高いので補償金の額が上がるかもしれないが,大きな影響は無いだろうと見ている。

--ダビング10実施に至る議論の中で,権利者は「補償金制度の検討の早期の合意形成」と「補償金制度以外の対価の還元の検討」を求めている(Tech-On!関連記事5)。これについてどう考えるか。

長谷川氏 デジタル・コンテンツの流通を議論している(総務省の)委員会が,補償金制度の議論の行方に興味を持つのは当然である。逆に言うと,そのような文言が審議会答申に盛り込まれたとしても,録録小委における議論が直接影響を受けるとは思わない。我々は「真摯に検討していきたい」と言っているわけで,永遠に議論を続けようとは思っていない。真摯に議論をして早期に決着がつくのであれば決着させたい。それは議論に携わる我々の義務のようなものだ。

 「補償金制度以外の対価の還元の手段」はまさにメーカーのもともとの主張である。クリエーターの対価の還元はまずクリエーター自身がコンテンツを提供する段階で行われるべき。その対価が適切かどうかという議論がこれまで抜けていた。もっと広い立場で例えば「コンテンツ振興基金」といった議論を総務省の審議会でやるべきかどうかには異論もあるとは思う。とはいえ,もしこうした議論が始まるなら,メーカーとして議論に参加する用意はある。ただし,こうした課題はメーカーだけがツケを負っている訳ではない。我々だけが答えを求められる議論には納得しないが,クリエーターの方々が新しいビジネス・モデルを作るお手伝いをするのはやぶさかではない。

--権利者はしばしば,補償金制度は事実上,メーカーの利益をクリエーターに還元する制度だと言っている。権利者とメーカーの間には制度の理解に関して大きな差があるように見える。

長谷川氏 現行の制度で補償金を支払っているのはあくまでユーザーであり,メーカーは納付をお手伝いしている立場である。そこを間違えないでほしい。(質問にあるような)権利者の発言は聞こえている。こうした議論でそれぞれの見解に幅があるのはある程度しょうがない。学説の議論ではないから,議論の決着に至るために,見解の幅の中で妥協すべき所は妥協したいと思っている。