音楽CDからの録音への課金は容認していない

 ただし,「音楽CDからの録音」に関してはやや誤解があるように思う。我々は音楽CDからの録音への課金を容認したつもりはない。昨期の録録小委 第16回(2008年1月17日)で提示された資料には,「音楽CDからの録音と無料デジタル放送からの録画については当面補償金制度での対応を検討する必要がある」と書かれている(Tech-On!関連記事3)。つまり対応を検討した結果,「やはり必要ない」という結論に達する可能性があるという含みがある。今期の録録小委は,こうした検討を一度も行っていない。

--文化庁提案に対する懸念としてJEITAは「補償金の縮小・廃止の道筋が見えない」と主張している。JEITAが考える「補償金制度の縮小・廃止」とはどのようなイメージか。

長谷川氏 文化庁提案では著作権法の改正を行っていわゆる「一体型機器」を対象に含めようとしている。我々は一体型の機器はタイムシフト,プレースシフト機器であるから補償金制度の対象とする必要はないと思っている。補償金制度に関して,著作権法の改正は必要ないと思う。政令の指定や指定における解釈の変更で対処できる範囲にとどめておくべきだ。そうやって制度を維持し,やがて指定すべき機器が無くなった時点で「制度が不要になる」のが,本来的な意味での「縮小・廃止」だろう。

--JEITAはこれまでも,DRMが適用された機器や一体型機器などについて「重大な経済的損失が発生していない」としている。「重大な経済的損失」とは具体的には何を指すのか。

長谷川氏 これまで補償金の適用に合意してきた事例に関しては,その時点において「重大な損失」があったのだと考える。ただその判断が未来永劫正しいかというと違うはずだ。そういう認識があるから文化庁も(補償金制度を)「将来的には縮小」と言っているのだと思う。つまり「重大な損失」は都度都度で判断すべき事項である。繰り返しになるが,一体型機器に関して我々は今,「重大な損失はない」と考えている。

--JEITAはBlu-ray Disc機器に関して「アナログ放送の録画に限って補償金制度の適用に同意する」という立場だったはず。6月17日に経済産業大臣と文部科学大臣大臣が発表した「Blu-ray課金の合意」との整合性をどう考えているのか。両大臣はこの措置を「ダビング10の早期実施に向けた環境整備」と説明している(Tech-On!関連記事4文科大臣の会見概要経産大臣の会見概要)。デジタル放送への補償金適用とも理解できる発言だ。

長谷川氏 厳しい質問で答えるのが難しい。権利者と同様に我々も文書などによる報告を受け取っていないので,合意の細部は分からないからだ。我々としてはこの件を,実際に政令が書かれるまではどうなるか分からないという風に理解している。つまり,見解が異なる部分に関しては「今後議論せよ」という意味だと思っている。