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軸受なしのモータに挑むベンチャーが旗揚げ,まずは超純水ポンプ向け 〔修整あり〕

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2008/07/07 09:30
原田 衛=日経ものづくり
開発中のベアリングレス・モータ。左に見えるのは制御ボックス(試作第1号機のためサイズが大きめ)。起動するときはまず「ラジアル」のボタンを押す。するとカタッという音と同時に軸が空中に浮き上がる。この時点では,スラスト方向に軸を押すと,少し硬めのスポンジのような感じで押し込むことができる。次に「スラスト」ボタンを押すと,スラスト方向に硬くなって位置が決まる。この状態でつまみを回し,目標回転速度を決めてやると,緩やかに増速していく。
開発中のベアリングレス・モータ。左に見えるのは制御ボックス(試作第1号機のためサイズが大きめ)。起動するときはまず「ラジアル」のボタンを押す。するとカタッという音と同時に軸が空中に浮き上がる。この時点では,スラスト方向に軸を押すと,少し硬めのスポンジのような感じで押し込むことができる。次に「スラスト」ボタンを押すと,スラスト方向に硬くなって位置が決まる。この状態でつまみを回し,目標回転速度を決めてやると,緩やかに増速していく。
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コンシクエントポール型の回転子(ロータ)と固定子(ステータ)の関係。
コンシクエントポール型の回転子(ロータ)と固定子(ステータ)の関係。
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今回のモータは5軸制御を行う。X,Y,Z方向の軸の並行移動と,X軸周りの軸の回転,Y軸周りの軸の回転の合計5軸を制御する。渦電流型センサも五つ,付いている。
今回のモータは5軸制御を行う。X,Y,Z方向の軸の並行移動と,X軸周りの軸の回転,Y軸周りの軸の回転の合計5軸を制御する。渦電流型センサも五つ,付いている。
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このモータは「3号機」(千葉教授)。奥に見えるのが,小型化した制御ボックス。
このモータは「3号機」(千葉教授)。奥に見えるのが,小型化した制御ボックス。
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 玉軸受や滑り軸受などを使わず,非接触で磁気的に軸を支えながら同時に回転力を与える,いわゆるベアリングレス・モータの実用化に取り組むベンチャー企業が旗揚げした。2008年5月28日に設立のモーターソリューション(本社:千葉県野田市)である。まずは半導体製造工場内の超純水用ポンプに組み込むモータとして製品化し,約100万円で販売する予定である。

 同社は,東京理科大学 理工学部 電気電子情報工学科 教授の千葉明氏らが開発した「コンシクエントポール型(Consequent-Pole:結果的にできる極,という意味)」のベアリングレス・モータの製品化を目指す大学発ベンチャー企業である。代表取締役には,千葉教授と学生時代にモータについて一緒に研究した楊仲慶氏が就き,千葉教授は専務取締役に就任した。楊氏は,モータ駆動用のインバータ回路の受託開発などを手掛けるマイウェイ技研の代表取締役でもある。資本金の1400万円は,長年研究を一緒にしてきた仲間などから集めた。モーターソリューションは,ベアリングレス・モータの開発や製造・販売と,一般のモータの受託開発などで事業化後3年目で1億円の売り上げを目指す。

 ベアリングレス・モータは,摺動部がないことから,(1)ダストの発生がほとんどない,(2)高速回転が可能,(3)極低温や真空といった潤滑油が使いにくい状況でも問題ない,(4)騒音が小さい,(5)摩擦損失がほとんどない,といった特徴がある。このため,研究が以前から盛んに行われてきた。

 従来は,モータとは別に磁気軸受を取り付ける例もあったが,モータが大型化してしまう上,回転にかかわらず常に浮上用電力の供給が必要といった課題があった。これに対して,モータを回転させるための機構をうまく応用して軸の浮上も同時に行う方式が登場したが,一般に浮上力が小さめで,トルクも通常のモータに比べて大きく減じてしまうなどの難点があった。

 千葉教授は研究を進める中で,今回のコンシクエントポール型の構造が,ベアリングレス・モータの構造として優れていることを突き止めた。具体的には,これまでのベアリングレス・モータに比べて浮上力は30倍以上,トルクは通常のモータに対して10%減程度で済むという。

 構造は次の通りである。回転子に埋め込む永久磁石の方向を一定にそろえて(例えばすべてN極を外側にして埋め込む),さらに磁石と磁石の間に鉄心がのぞくようにした。こうすることで,回転子の外側にN極から出た磁束が,まず対向する固定子側に入り,ぐるっと回って固定子から再び回転子の鉄心部分に入り(つまり,鉄心部がS極のようになる。つまり「結果的に極に」なる),先ほどの磁石のS極に戻るという磁気回路を形成する(論文:PDF形式)。ちなみに,このコンシクエントポール型の構造は,英国の研究者がもともとモータの低価格化のために磁石数を減らす目的で開発したものだったという。

 この回転子を使うと,軸を支えるための支持磁束は,すべて回転子の鉄心部分を通るので,永久磁石の厚みを増やしても減磁が起こらず,さらに回転子がどのような角度でも軸の支持力が安定的に発生する(論文:PDF形式)。このため,エンコーダのような角度位置のセンサや,それに対応した高速制御の必要もないといったメリットもある。

 今回,超純水用ポンプに応用するのは,5軸制御のベアリングレス・モータである。すなわち,モータの半径(ラジアル)方向の軸の位置ズレ(2次元)と,軸(スラスト)方向の位置ズレ,軸がラジアル方向に斜めになってしまうズレ(2次元)の合計5軸を制御できる。モータの直径は200mm弱,軸の突出部を除くモータの全長も200mm弱という。これで最大6000rpm,出力1.2kW,最大トルクは約2N・mの能力がある。スラスト方向の耐荷重は約100Nである。なお,軸の位置の把握には渦電流式センサを用いている。

 開発にあたって苦労したのは,回転子と固定子のギャップを数mmと非常に広く取らざるを得なかった点だという。同ポンプは,いわゆるキャンドポンプといわれる,巻き線部分などを封止して密閉し,水中などでも使えるようにしたポンプで,インペラ(羽根車)もモータも水中にそのまま置けるようにしたタイプである。つまり,回転子も固定子も樹脂で覆い,その間に水が入るため,ある程度のギャップをさらに設けて水の抵抗を減らす必要があった。そこで今回は回転子の周囲に厚めの樹脂層,固定子の周囲に同じ厚さの樹脂層,そしてこれらの樹脂層の間に通常よりずっと広い空隙を確保した。「通常のモータだとギャップは0.5mm程度。これを,二つの樹脂層と空隙を合わせるとケタ違いに広げる必要があった。しかもベアリングレスで効率よく動くように設計するのは大変だった」(千葉教授)。例えば,ギャップが狭いときは2次元の電磁界解析でもうまく実験と合っていたが,ギャップが広がると,3次元の電磁界解析でないと設計できなくなったという。

 競合するのは,スイス・チューリヒに本社を置くLevitronics, Inc.だという(参考文献:日経メカニカル2002年5月号・名品解剖「インペラが磁気浮上するポンプ」)。同社のものは2軸制御なので,水の圧力が突然変動したりすると,軸が傾いて回転子と固定子が衝突することもあったという。今回モーターソリューションは,まず5軸制御の超純水用ポンプとしてLevitronics社が先行する市場に打って出るが,今後は,厳しい環境で使われる用途はもちろん,高速回転する軸の位置をゆっくりと移動させるといった,機械的な軸受がないということを最大限に生かした特殊用途の開拓にも挑んでいきたいとする。

〔修整あり〕
 取材先からの申し入れにより,一部の表現を修整いたしました。

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