モニターの輝度を適切な値まで下げて使用すると,作業後の目の疲労度が低下する——。ナナオが行った長時間のパソコン作業による眼精疲労に関する調査で,こんな結果が出た。パソコンの使用時間の増加に加え,液晶モニターの高輝度化もパソコン作業による眼精疲労の要因になっていると仮定し,独自の調査を行ったもの。モニター輝度の変更,作業中に休憩やVDT指導を加えた場合など,モニターの使用条件を変えた3つの場合を設定し,目の疲労度を測る実験を行った。なお,同社の液晶モニターの輝度は,7年前と比べて1.7倍になっているという。

 目の疲労度の測定には,ものがはっきり見える一番近い距離(調節近点距離)を用いた。一般に目が疲れると,ピント調節力の低下により,調節近点距離が遠くなるためである。1日のパソコンの作業前と作業後の調節近点距離の延長率を疲労度の尺度とした。調査におけるパソコンの作業には,同社の液晶モニター「FlexScan S2431W-E」を使用した。

 まず,輝度が約450cd/m2(標準設定)のモニターを使用した場合,調節近点距離は作業後に14.61%延びた。次に,同社のモニター輝度の自動調節機能である「BrightRegulator」使用時に相当する輝度まで下げたモニターで作業した場合(適切な輝度),調節近点距離の延長率は6.65%だった。さらに,適切な輝度に1時間当たり10分の作業休止,適切な作業姿勢保持,適切なモニターの高さや角度の調整といったVDT指導を加えた場合(適切な輝度+VDT指導)の調節近点距離の延長率は0.48%まで下がった。同社は,モニターの輝度の設定や適切なモニターの設定および作業姿勢,休憩を取ることによって,目の疲労を軽減した作業が行える可能性があると説明する。

作業後の疲労度の比較
作業後の疲労度の比較 (画像のクリックで拡大)

 さらにパソコンの作業後,目の疲れや乾き,視界のぼやけといった疲労の自覚症状や,頭痛や首・肩の疲れ,背中,腰など体の部位ごとの疲労に関してアンケート調査を行った。いずれの結果でも,標準設定に比べて適切な輝度にした場合,適切な輝度+VDT指導をした場合では,体感する疲労度が低下したという。

作業後の目の疲労症状
作業後の目の疲労症状 (画像のクリックで拡大)

作業後の体の部位の疲労
作業後の体の部位の疲労 (画像のクリックで拡大)

 モニターの使用条件を変えた場合の作業効率への影響を図るため,測定条件の違いによる入力文字数の集計も行った。この結果,入力文字数は標準設定を100%とすると,適切な輝度にした場合には4.6%,適切な輝度+VDT指導した場合には12.5%上昇する結果が得られたとする。

使用条件を変えた場合の作業量の変化
使用条件を変えた場合の作業量の変化 (画像のクリックで拡大)