図1◎新中期経営方針を発表したソニーの経営陣。左からソニー・コンピュータエンタテインメント社長兼グループCEOの平井一夫氏,ソニー会長兼CEOのHoward Stringer氏,同社社長兼エレクトロニクスCEOの中鉢良治氏,同社執行役EVP兼CFOの大根田伸行氏。
図1◎新中期経営方針を発表したソニーの経営陣。左からソニー・コンピュータエンタテインメント社長兼グループCEOの平井一夫氏,ソニー会長兼CEOのHoward Stringer氏,同社社長兼エレクトロニクスCEOの中鉢良治氏,同社執行役EVP兼CFOの大根田伸行氏。
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 ソニーは2008年6月26日,2008年度から2010年度の3年間を対象とする新しい中期経営方針を発表した(図)。これまでの主要な市場であった日米欧以外の地域に「最大のビジネスチャンスが存在する」(ソニー会長兼CEOのHoward Stringer氏)と考え,高成長を続けるブラジル,ロシア,インド,中国のBRICs諸国に力を入れる。コア事業であるエレクトロニクス事業の同諸国での売上高を2010年度に1兆2000億円と,2007年度の6000億円から倍増させる計画。

 新しい中期経営方針では,三つの重要施策(A)コアビジネスの強化(B)ネットワーク接続サービスの提供(C)BRICs諸国など急成長市場でのビジネスの拡大──を設定。具体的な目標として,以下の四つを打ち出した。

(1)パソコン事業,Blu-ray Disc関連商品事業,半導体・コンポーネント事業の三つを,それぞれ1兆円規模にまで成長させる。これにより,既に1兆円を越えている4事業(テレビ事業,デジタルイメージング事業,ゲーム事業,携帯電話機事業)を合わせて,七つの1兆円規模事業を生み出す。

(2)2010年度までに,製品カテゴリーのうち90%についてネットワーク機能内蔵タイプおよびワイヤレス対応タイプにする。

(3)2008年夏に「PLAYSTATION Network」上での展開を初めとして,各主要製品にビデオ配信サービスを順次展開する。

(4)BRICs諸国における年間売上高を2010年度末までに2兆円に拡大する(上述の通り,このうち6割をエレクトロニクス事業が占めることになる)。

 全体として,同社の今後の3年間の成長を支えるのは既存事業。新市場創造型の製品や事業についての発表は目立たなかった。既存製品の接続性など使い勝手の強化や,サービス機能の付与などで,製品の付加価値を強めていくという方針のようだ。

 特に大きな飛躍が見込めそうなのは,BRICs諸国でのビジネス。「急成長市場であり,さらに量の拡大を狙う」(同社社長兼エレクトロニクスCEOの中鉢良治氏)。このために,人材を含む販売力の強化のための投資に加え,グループを挙げてのブランドの強化や,FIFAなどのスポンサーシップを活用したマーケティング活動を展開するという。

 前回の中期経営方針とは異なり,営業利益率の具体的な数値目標は示さず,「業界をリードし,イノベーションを続ける上で営業利益率5%はベースライン」(同社執行役EVP兼CFOの大根田伸行氏)と説明した。代わりに,2010年度までに株主資本利益率(ROE)の10%を目標にすると発表した。売上高の目標も明示しなかったが,「できる限り早い段階で売上高を10兆円にしたい」(同氏)という。

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