米iSuppli Corp.は,米Apple Inc.が2008年7月11日に発売を予定する携帯電話機,「iPhone 3G」の部品および製造コストに関する分析を発表した(発表資料Tech-On!の関連記事1同2)。同社は,8Gバイト機種の部品のみのコストを164米ドル,部品コストと製造コストの合計を173米ドルと推計する。なお,このコストにはソフトウエアや付属品,出荷,包装にかかる費用などは含んでいない。

「iPhone 3G」の部品および製造コスト(iSuppli社の推計による)
「iPhone 3G」の部品および製造コスト(iSuppli社の推計による) (画像のクリックで拡大)

 コストの内訳を見ると,部品の中で最も高額なのはNANDフラッシュ・メモリで,22.8米ドルを占める。次いで高いのはタッチ・スクリーンとディスプレイで,いずれも20米ドル。HSDPA方式対応のデジタル・ベースバンド・チップは15米ドルで,アプリケーション・プロセサは13.5米ドルと分析する。

 iPhone 3Gは,第3世代(3G)携帯電話対応など第1世代機種に比べて機能性と使いやすさが大きく改善しているものの,製造コストが高くなり過ぎていることはない,とiSuppli社は説明する。同社の推計による部品コスト削減後の第1世代機種の部品・製造コストは226米ドル(Tech-On!の関連記事3)。173米ドルというiPhone 3Gの部品・製造コストは,第1世代機種から23%削減されていることになる。

 さらに,iPhone 3Gの部品・製造コストは今後,部品価格の低下によって減少する見込みという。iSuppli社の予測によれば,iPhone 3Gの部品・製造コストは2009年に148米ドルまで下がる見通し。仮に2012年までiPhone 3Gが設計変更されなければ,126米ドルまで下がるとみる。

1台あたりの販売奨励金は推計300米ドル

 iSuppli社は併せて,iPhone 3Gの販売奨励金の金額も推計した。iPhone 3Gは,携帯電話事業者が販売奨励金を支払うことによって低価格化を実現している。Apple社が発表した8Gバイト機種の価格は199米ドル。4Gバイト機種が499米ドル,8Gバイト機種が599米ドルという第1世代機種の販売価格と比べて,大幅に低下した。iSuppli社によれば,携帯電話機事業者がApple社に支払う販売奨励金は1台当たり約300米ドルという。つまり,Apple社は携帯電話機事業者に対して,iPhone 3Gを実質的には第1世代機種と同水準の499米ドルで販売しているとする。

 これらの推定を元に計算すると,販売奨励金を含めたiPhone 3Gの販売価格に占める部品・製造コストは約34.7%。この値はこれまでのApple社製品の部品・製造コストよりも低く,iPhone 3Gの部品・製造コストを除いた1台当たりの利益幅は大きいとiSuppli社は指摘する。これまで同社が独自に行った分解調査では,Apple社の「iPhone」と「iPod」の部品・製造コストは50%程度だったという。