総務省「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」(デジコン委,情報通信審議会の下部組織)の第41回会合が,2008年6月24日午後に急遽,開催された。デジコン委の上位組織である情報通信政策部会に提出する報告書の内容のうち,ダビング10実施の経緯とコピー制御ルールの遵守を担保する手段(エンフォースメント)の2項目に関する記述を議論した。

 ダビング10に関しては,「実施に至る経緯を詳しく記述する」(主査の慶応大学 村井純氏)などの修正を加えた結果,記述に関して委員から特に意見は出なかった。一方,エンフォースメントに関する記述については各委員から活発な発言があった。

 オブザーバーとして出席した松下電器産業の榊原美紀氏からは,「法制化の原則は民間の努力が十分になされ,それでも問題を解決できなかった場合に限るべき」などと,罰則規定を含む法案を新たに策定することでコピー制御ルールの遵守を担保する「法的エンフォースメント」の導入に難色を示す意見が表明された。

 この一方,消費者側の委員である主婦連合会の河村真紀子氏やNPO法人東京都地域婦人団体連盟の長田三紀氏,生活経済ジャーナリストの高橋伸子氏からは,技術的エンフォースメントとして現在実施されている「B-CAS方式」やその実行に伴う地デジのスクランブル放送に異を唱える意見が出た。「B-CASについては現時点で実効性は全くないように思う」(河村氏),「基幹放送である地上放送にスクランブルを掛けるのはやはり大きな問題」(長田氏),「これまで(民間の努力として)自由にやってきた結果として導入されたコピーワンスの修正に,これだけ時間が掛かる現実がある」(高橋氏)。

 権利者側の委員である実演家著作隣接権センター(CPRA)の椎名和夫氏は,「論点として大事なことは現在のB-CASが破綻しているという事実。この件に関してはメーカーさん以外のおそらく全員がおかしいと思っている。技術の検討が先とおっしゃるが,穴蔵で技術を出されても困る。検討に値する技術があるなら堂々とこの場に出して検討すべきだと思う」といった意見が出た。

 デジコン委は6月19日に開かれた第40回会合で,地上デジ録画機など向けの新しい著作権保護ルール「ダビング10」の早期実施を決め,報告書の作成を主査の村井氏に一任する形で今期の議論を終了したはずだった。だが,6月23日に開かれたデジコン委の親会である情報通信政策部会の第30回会合で,作成されたデジコン委の報告書の骨子案にいくつかの問題点が指摘された(Tech-On!関連記事)。問題を指摘したのは,デジコン委と情報通信政策部会の委員を兼ねる生活経済ジャーナリストの高橋氏である。こうした経緯があり,40回会合以降に追記された部分を再修正し,今回の議論に臨んだ経緯がある。

 今回の議論を踏まえて,主査の村井氏と事務局である総務省で記述を再修正した上でデジコン委の報告書を作成する。最終的な報告書は,今週末の6月27日に行われる情報通信審議会の第19回総会で,情報通信政策部会の主査から提出される予定だ。