図1 視聴会で披露したデジタル・スピーカー
図1 視聴会で披露したデジタル・スピーカー
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図2 マルチアレイ状のスピーカーの駆動に用いたボード。電源は単1電池1本
図2 マルチアレイ状のスピーカーの駆動に用いたボード。電源は単1電池1本
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図3 6個のボイス・コイル内蔵スピーカーの駆動に用いたボード。電源は単1電池1本
図3 6個のボイス・コイル内蔵スピーカーの駆動に用いたボード。電源は単1電池1本
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 Trigence Semiconductorは2008年6月23日,先ごろ発表したデジタル・スピーカーの視聴会を開催し,新たに開発したマルチアレイ状のスピーカーなどを披露した。デジタル・スピーカーは,デジタル・オーディオ信号を入力し,この信号を空間で合成して音声に変えるというもの(Tech-On!関連記事日経エレクトロニクス関連記事)。パワー・アンプやLCフィルタといったアナログ部品は不要であり,さらに1.5V程度の低い電圧で駆動できるといった利点がある。実現形態は,複数個のスピーカーで構成するスピーカー・アレイ,あるいは複数個のボイス・コイルを組み込んだスピーカーになる。今回,初披露したマルチアレイ状のスピーカーは前者の形態を採る。

 マルチアレイ状のスピーカーは,口径8cm弱のダイナミック・スピーカーを8個縦に並べて実装したもの。デモンストレーションではこのマルチアレイ状のスピーカーを2系統使い,ステレオ再生していた。入力したデジタル・オーディオ信号を,Trigence Semiconductorが開発した技術「Dnote」によって変調し,複数個のダイナミック・スピーカーを駆動するデジタル信号を作り出している。デジタル信号に応じて各ダイナミック・スピーカーをオン/オフさせる際には,MOSFETによるスイッチで制御する。各ダイナミック・スピーカーは,最速数MHzのオーダーでオン/オフしている。デモンストレーションでは,DnoteのIPを組み込んだFPGAを使った。駆動電流は再生する音楽に依存するが,各ダイナミック・スピーカーにおおよそ数mA,スピーカー全体で十数mA程度を供給しているという。

各スピーカーの特性バラつき起因の雑音を低減

 各ダイナミック・スピーカーの特性差による音質低下を防ぐため,ミスマッチ・シェーパーと呼ぶバラつき軽減技術を用いた。ミスマッチ・シェーパーでは,どのダイナミック・スピーカーに出力するのかを適宜変更している。マルチアレイ状スピーカーとしての雑音特性は,周波数領域が20~20kHzで-90dB程度とする。デモンストレーションでは,ミスマッチ・シェーパーの有無による音質の差も比較した。

 ミスマッチ・シェーパーを使わないと,再生した音楽には雑音が混じって聴こえた。Trigence Semiconductorによれば,ミスマッチ・シェーパーによって,雑音特性を50~60dB低減することが可能という。今回のスピーカーの開発で協力したリードサウンドによれば,今回使用したダイナミック・スピーカーのインピーダンスのバラつきは0.3~0.4%程度。仮に特性バラつきが10%程度あったとしても,ミスマッチ・シェーパーを使えばバラつき起因の雑音を十分に軽減できるとする。

 このほか,6個のボイス・コイルを組み込んだスピーカーを2系統使い,ステレオ再生するデモンストレーションも披露した。スピーカーの口径は10cmであり,1.5Vで駆動していた。