記者の質問に答える椎名氏
記者の質問に答える椎名氏 (画像のクリックで拡大)

 地デジ対応録画機など向けの新しい著作権保護ルール「ダビング10」への運用切り替え実施日が2008年7月4日と決まった。2008年6月19日に行われた総務省「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」(デジコン委,情報通信審議会の下部組織)の第40回会合において,関係者の合意が得られ,その場の調整で7月4日という日程が提案された(Tech-On!関連記事1)。地上デジタル放送推進協会(Dpa)を中心に調整が進められており,本日(6月23日)中には正式に公表される予定だ。

 関係者の合意が得られたのは会合の終盤に,委員の一人である実演家著作隣接権センター(CPRA)の椎名和夫氏が「ダビング10実施期日の確定」を提案し,権利者が譲歩したためである。ダビング10の実施は「クリエーターへの適正な対価の還元」を巡って,メーカーと権利者が対立し,合意の形成ができない状態だった(Tech-On!関連記事2)。

 強硬な姿勢を貫いてきた権利者が土壇場で折れたのはなぜか。会合終了直後に椎名氏と記者団で行われた一問一答を紹介する。


--これまでの主張を覆して合意に向けて譲歩したのはなぜか。

椎名氏 ここが潮時かなと判断した。決めたのは今日。実は2週間くらい前からずっと考えていてタイミングを見計らっていた。ダビング10の決定プロセスには僕も関わっており,思い入れもある。自分たちが納得できないからと言って,棺桶まで持って行くわけにはいかない。ダビング10の実施のために,汗をかくべき我々が汗をかいたということ。北京五輪という具体的なターゲットがあり,実施を待っているユーザーもいる。僕らもダビング10実施でがっかりするわけではない。むしろ喜ぶだけ。

--権利者団体全部のコンセンサスを取ったのか。

椎名氏 そこは難しい。デジコン委に参加している権利者系の委員は5人いるが,その5人でいろいろ意見交換をしながら合意した。人質論がよく言われるが,我々が補償金(私的録音録画補償金)を人質に取ったわけではない。デジコン委は村井先生(主査の慶応大学 村井純氏)以下,対価の還元が実現されるか見てくれていた。そのためのWGも設置された。その場で「実現されているか」と聞かれたら「まだです」と答えざるを得ない状況だっただけ。とはいえ,そうした状況はいつまでも続けられない。村井先生が真摯に対応してくれているのに,村井先生に問題のすべてを押し付けるわけにはいかない。みんな頭を抱えているのに自分だけ呪文を唱えていればいいってもんじゃないよね。