「どなたか良いアイデアはありませんか?」と主査の村井純氏(慶応大学教授)が問いかける。会場が気まずい雰囲気で静まりかえる中,口を開いたのは,実演家著作隣接権センター(CPRA)の椎名和夫氏だった。「今後も膠着状態を続けることに意味はない。村井主査と増田寛也総務相の思いを受け止めたい考えもある。ことダビング10に限って,補償金問題と切り離して考え,本日この場でダビング10の実施期日を確定することを提案したい」。

 地上デジタル放送(地デジ)などの録画機向けの新しい著作権保護ルール「ダビング10」の実施が固まった。2008年6月19日に行われた総務省「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」(デジコン委,情報通信審議会の下部組織)の第40回会合にて「関係者の合意」を確認した(速報記事)。続く審議で約2週間の準備期間をおき,「7月4日金曜日」をめどに実施することを決めた。地上デジタル放送推進協会(Dpa)を中心に調整し,近日中に日程を確定する。

 合意を確認できたのは,椎名氏が会議の終盤に冒頭のような発言をして権利者が譲歩したため。他の関係者に異論はなく合意が確定した。ただし,これにあたり椎名氏は二つの要望を述べた。「補償金制度問題の早期解決に情報通信審議会として明確な期待感を示す」,「補償金以外に『クリエーターへの適正な対価の還元』を実現する施策について今後,情報通信審議会で検討する」という二つを,今後提出される情報通信審議会の報告書(第5次答申)に盛り込むことである。前者は今後,文化庁の文化審議会などで行われる補償金制度改革の議論を有利に進めようとする狙いがあり,後者は例えば「コンテンツ税」のような制度の検討を求めていくことになると思われる。

 なお,実施日程である7月4日は,委員の一人である主婦連合会の河村真紀子氏の誕生日が7月5日であることから決められた。「告知などのために約2週間の準備期間」を求めたDpa技術委員会委員長でもあるフジテレビの関祥行氏や,5日が土曜日であることから,「販売政策の観点から土日前に開始したい」とした日立製作所の田胡修一氏らの意見を勘案した。「誕生日というのはいろいろな都合で前日に祝うことも良くある。みなさんで河村さんの誕生日をお祝いしたい」(村井氏)。

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