内閣の知的財産戦略本部は2008年6月18日に「知的財産推進計画2008」を決定した。検索サービスのサーバーを国内に設置可能にするための法的措置を2008年度中に実施すること,包括的な権利制限規定(日本版フェアユース規定)の導入を含めた知財制度の検討を進めることなどを関係省庁に求めた(内閣官房知的財産戦略推進事務局のWebサイト)。

 「世界を睨んだ知財戦略の強化」という方針を打ち出した知的財産推進計画2008は,研究開発や新事業の創出,コンテンツの活用などにおいて日本が遅れている部分が多くあるという問題意識に立ったものになっている。「これまでの知財戦略の取組が諸外国に比し『競争力』や『持続的な生産性や成長力の向上』に十分つながっているのか,創造,保護,活用の各レベルでの成果は国際的な視点で見て果たして満足できる水準に達しているのか,といった視点をも踏まえつつ,早急に必要な対応策を講じていかなければならない」とした。

検索サーバーの国内設置を可能に

 知的財産推進計画2008には,内閣官房の「デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会」(Tech-On!の関連記事)が「早急に対応すべき課題」として提案した4項目を盛り込んだ(専門調査会の資料)。

 まず「ネット検索サービス等に係る法的課題を解決する」として,2008年度中にネット検索サービスを円滑に展開できるようにするための法的措置を取ることを求めた。これまで,検索用のサーバーを国内に設置するとサーバーへの情報の収集が著作権法上の複製に該当する恐れがあった。

 このほか「コンテンツ配信に伴うサーバー上の複製行為等に係る法的課題を解決する」として,コンテンツ配信などの通信過程においてサーバーなどで生じる一時的な蓄積を権利者の利益を不当に害しない範囲で適法化すること,「リバース・エンジニアリングに係る法的課題を解決する」として,革新的なソフトウエアの開発や情報セキュリティの確保のために必要な範囲でのコンピュータ・プログラムのリバース・エンジニアリングを適法化すること,「研究開発における情報利用の円滑化に係る法的課題を解決する」として,データ解析などの研究開発に必要な範囲での著作物の複製を適法化することをそれぞれ求めた。

専門調査会の議論に期待

 また知的財産戦略本部は知的財産推進計画2008で,「デジタル・ネット時代に対応した知財制度を整備する」とした。デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会が2008年5月29日の第3回会合で「今後の検討課題」として示していた項目を挙げ,それらの検討を進めて2008年度中に結論を得ることを求めた。

 デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会は,(1)インターネットを活用した新しいビジネスにおけるコンテンツの二次利用促進や一般ユーザーによるネット上での創作といった新しい創作形態への対応といったコンテンツの流通促進方策,(2)著作権者などの利益を不当に害しないと認められる利用を合法化する包括的な権利制限規定(日本版フェアユース規定)の導入,(3)ネット上の違法コンテンツの流通防止策やグローバルに流通する違法コンテンツへの国際的な対策,などを今後検討していくことを5月29日に示していた。