次世代USBインタフェース「USB 3.0」の光伝送構想が,取りやめになったようだ。米Agilent Technologies Inc.でUSB 3.0関連の業務を手掛けるJim Choate氏は,2008年6月4日に同社のイベント「Agilent Measurement Forum 2008」で講演し,USB 3.0の仕様策定状況を明らかにした。

 Choate氏によれば,策定中の仕様は現在,「Version 0.85」の段階にまで達しており,正式仕様は2008年末に発行される予定という。当初の予定では2008年前半にも正式仕様をまとめるとしていたが,約半年遅れることになる(Tech-On!の関連記事)。さらに当初は,銅線による伝送のほかに光接続による伝送仕様を盛り込むとしていたが,構想段階で中止になったという。「最初は光接続に関しても議論されていたが,コスト面を考慮し,取りやめることになった。これは既に,Promoter Group各社のコンセンサスを得ていることだ」(Agilent Technologies社,Measurement Technologies,Digital Test Division ScopesのJim Choate氏)。ケーブルや送受信回路のコスト低減を図るため,銅線ケーブルによる伝送に絞ったもようだ。

 光伝送に関しては当初から,回路構成の難易度が高まることなどを理由に,主導企業内でも反対意見があった。ただ,主導企業の一社であるIntel社が積極的に採用を働きかけていた経緯がある。同グループ内での審議を経て,Intel社も考えを変えたようだ。ただし,「現行USBの20倍以上など,より高速伝送仕様を作る場合には光があるかもしれない」(Agilent社のChoate氏)としており,最初の正式版には採用されずとも,将来の拡張仕様において利用する可能性は残っているもようだ。

8B/10B符号化を採用

 Choate氏はこのほか,現在審議中の仕様内容について一部明らかにした。まず伝送符号化の手法では,現行のNRZIから,8B/10BのPRBSを採用する方向だ。伝送速度が高くなることに対応し,従来は用いていなかったSSC(スペクトラム拡散クロック)を利用するという。

 後方互換性を確保するため,信号線を8本とし,現行USB 2.0の信号伝送にも対応する。伝送距離に関しては「USB 2.0では5mという規定があったが,USB 3.0では指定しない見込み」(Choate氏)という。許容パワーについては,従来の特性から50%程度高い値を設定することが議論されているとした。

 転送モードに関しては,BulkやControl,Interrupt,Isochronousといった従来のモードに対応する。パワー・マネージメントに関しては,待機時消費電力を低減するため,四つのモードを設定する。それは1)アクティブ・モード「U0」,2)PLLがアクティブでドライバー回路をオフにするモード「U1」,3)PLLをオフにでき,ドライバー回路もオフのモード,4)デバイス・サスペンド・モード「U3」である。このうちレイテンシは,U1が10μs,U2が1ms,U3が10msである。ケーブルに関しては,シールド付きが必須になる方向だとしている。