Windows Mobile Design Lab内の様子。社員が交流しやすい環境を目指し,部屋をオープンにしている。社内の他の事業部でも真似を始めているという。
Windows Mobile Design Lab内の様子。社員が交流しやすい環境を目指し,部屋をオープンにしている。社内の他の事業部でも真似を始めているという。
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 「ユーザー研究の成果から,製品デザインを評価するフレームワークを構築する。新しく開発された製品がこのフレームワークに照らして仮に不合格になったら,製品の出荷を拒否する権限を持たせる」。

 このように力強く宣言したのは米Microsoft Corp.のWindows Mobile Design Lab でDirectorを努めるAlistair Hamilton氏である。Mobile Design LabはMicrosoft社の携帯端末向け製品の「ユーザー体験(user experience)」のデザインを担当する部署である。米Microsoft 社が2008年5月,同社の携帯端末向けのソフトウエアやサービスを報道陣に紹介するために開いたイベント(Tech-On!関連記事)の席上で,Hamilton氏はこのような話をした。

技術者とユーザーの食事会で研究

 Hamilton氏によると,Windows Mobile Design Labは25名のデザイナーやユーザー研究の担当者からなる。ユーザー研究の担当者は全部で10名。うち2名は民族誌学者(Tech-On!関連記事)である。彼らは「民族誌学(ethnography)」の手法を応用して,機器などの実際の利用現場でユーザーの行動を調査している。そのうちの一人である同社,design anthropologistのDonna Flynn氏は文化人類学の博士号を持っているという。「アフリカで民族誌学の研究に従事した経験もある。当時はこのようなハイテク企業に勤務するとは夢にも思わなかった」(同氏)。

 Windows Mobile Design Labの成果としては,ユーザーがWindows Mobileを搭載した端末を購入した直後のユーザー体験を改善する「Initial Customer Experience(ICE)」プロジェクトがある。約200名のユーザーを探し,それぞれのユーザーがWindows Mobile端末を購入した日の行動を丸一日調査した。調査結果は,Windows Mobileのバージョン6や6.1に採用されたセットアップ用ウィザード・ソフトウエアの改良に反映されたという。

 Windows Mobile Design Labはこのほか,ユーザー研究の成果を使って,典型的な携帯端末ユーザーの「ペルソナ」を策定した。社内の開発者が想定ユーザー像を理解する手助けをするためだ。このペルソナの利用は社内に広まっており,「技術者や技術関連事業部の副社長なら誰でもこのペルソナを良く知っている」(Flynn氏)という。技術者にユーザーをもっと身近に感じてもらうために,技術者とユーザーが一緒に食事を食べて体験を話し合う会を企画したこともある,という。