図1 日立製作所の経営方針を説明する同社 代表取締役社長の古川一夫氏
図1 日立製作所の経営方針を説明する同社 代表取締役社長の古川一夫氏
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 日立製作所は2008年5月26日,経営方針説明会を開催した。同社 代表取締役社長の古川一夫氏は,不振の続く薄型テレビ事業や回復の兆しが見え始めたHDD事業について,今後も同社のコア事業として位置付ける方針を示した。

薄型テレビ事業を続ける理由

 薄型テレビ事業を含むデジタルメディア・民生機器部門の2007年度の営業損益は1099億円の赤字で,中でも薄型テレビ事業が大きく足を引っ張った格好となった。古川氏は,この不振が続く薄型テレビ事業を同社のコア事業と位置付ける理由として3点挙げた。

 まずは「世界的にみて薄型テレビ市場が成長していること」(古川氏,以下の発言はすべて同氏)である。同社は特に,BRICSなどの新興国における薄型テレビの販売に注力する方針という。次に「薄型テレビの機能が変化していること」である。古川氏は今後,放送と通信が融合していく窓口となるのが薄型テレビとみているという。このため,テレビ向けネット・サービス「Wooonet」を2008年6月から開始することを例に挙げた。

 最後に「テクノロジーを要求する商品であること」を挙げた。薄型テレビは「壁張りテレビ」になり,技術力が商品力を左右するものとなる見通しを示した。具体的には,2007年度に発売した厚さ35mmの液晶テレビ(関連記事1)や,「2008 International CES」において発表した厚さ35mmのプラズマ・テレビ(関連記事2)を例に挙げた。

「HDDは大きく育てたい」

 赤字が続いていたHDD事業に関しては営業損益が回復基調にあり,2007年10~12月期,2008年1~3月期と2四半期連続で営業黒字を達成している。古川氏はこのHDD事業に関して「コア事業として大きく育てたい」と述べ,その理由として3点挙げた。まずは,「テクノロジーオリエンテッドな製品であること」という。同社が開発に注力する垂直磁気記録方式などで将来的にも「確実に勝てる事業」と意気込む。

 次に,「ストレージ・ビジネスを世界で展開していること」である。HDD事業が,薄型テレビ事業やIT事業に相乗効果を与えていると考えているという。最後に「世界で研究,開発,生産する事業であり,日立の事業の中で完全なグローバル・ビジネスを手掛ける事業であること」を挙げた。「2007年度に42%であった海外売上高比率を,2010年には50%にしたい」と意気込む古川氏にとって,HDD事業は同社としての格好のモデル事業とみている。

電力とクルマとグリーンIT

 このほか,古川氏は電力事業と自動車事業,情報システム事業に注力する方針を挙げた。電力事業では,米国での原子力発電所の受注獲得に注力する。同社は2007年,米General Electric社と沸騰水型原子炉(BWR:boiling water reactor)を中心とする原子力事業での戦略的提携に基本合意している(関連記事3)。

 自動車事業では,Liイオン2次電池に注力する方針という。同社は米General Motors社に,2010年から自動車向けLiイオン2次電池を10万台/年の規模で販売する(関連記事4)。

 情報システム事業においては,環境保護の観点から,IT関連の機器や施設の消費電力削減などを進める,いわゆる「グリーンIT」化への動きに対応するという。「データ・センターなどの省電力化を進めるには,IT技術だけでは実現できない。電源技術やエアコン技術などにも長けた日立の総合力が生かせる分野」と自信を見せた。

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図2 薄型テレビ事業の概要(2)
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図3 薄型テレビ事業の概要(2)
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図4 HDD事業の概要(1)
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図5 HDD事業の概要(2)
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図6 電力事業の概要
図6 電力事業の概要
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図7 自動車事業の概要
図7 自動車事業の概要
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