LiMo FoundationのExecutive DirectorであるMorgan Gills氏
LiMo FoundationのExecutive DirectorであるMorgan Gills氏
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 携帯電話機向けのソフトウエア・プラットフォームを策定しているLiMo Foundation(LiMo)のExecutive DirectorであるMorgan Gills氏が,東京で開催されたLiMo Foundation総会に参加するため来日,本誌記者のインタビューに応じた。Gills氏はLiMo Foundation運営の総括責任者として,マーケティングを含むさまざまな業務を担当している。

――LiMoが策定している規約は,どこまでオープン化されるのか。現時点でAPIを公開しているが,それだけではあまりオープンとは言えない。
Gills氏 APIに加え,アプリケーション・ソフトウエア向けの開発キット(SDK)を公開する予定だ。これはすべての開発者に対し,無償で公開する。確かにLiMoでは,プラットフォーム内部のソフトウエアを開発するには,メンバーになることが求められている。これは制限を目的とするのではなく,むしろ利用者の自由度を高める狙いがある。
 具体的には,LiMoプラットフォームの利用者は,互いに特許の問題をクリアにすることが義務づけられている。特許訴訟の恐れが無くなることで,プラットフォームに新しい革新が生まれるはずだ。

――しかし,そのことが逆に,メンバー企業にとっては制約にならないか。つまり,特許収入を得たい技術はプラットフォームに盛り込まれないことになるのでは。
Gills氏 そういう面は確かにある。実際,LiMo参加企業の一部は,プラットフォームに対する貢献はせず,議論に参加する程度の場合もある。だがLiMoとしては,それで構わない。参加に際して,貢献しなければならないという義務を課していないからだ。

――その結果として,LiMoはずいぶん「日本寄り」の印象を生み出していないか。プラットフォームへの貢献は,かなり日本企業が占めているようだが。
Gills氏 それはある意味で必然だ。LiMo設立時は,メンバー企業6社のうち3社が日本企業だった。約半分を占めていた。それが今は,40社中6社と,その比率はだいぶ下がっている。
 参加企業の数がそのままLiMoのカラーを決めるわけではないが,実際のところ日本と韓国の企業の貢献が多い。これは,両国の携帯電話機の市場が他国に比べ進んでいるからだ。LiMoはミドルレンジからハイエンドの携帯電話機向けのプラットフォームであり,こうしたプラットフォームが広く使われているのは日韓が先行している。そのノウハウが移転されるのを期待している海外企業は多い。
 逆に日韓の企業にとっては,既に市場が飽和状態であり,ビジネスを伸ばすために海外市場に出て行くチャンスとなる。

――現在は,ややプラットフォームが乱立気味だ。将来これは収束していくのか。
Gills氏 プラットフォームの数は少ないほどよいと考えている。アプリケーション開発者やコンテンツ提供者にとっては,個別対応しなければならないパターンが減るからだ。ただ実際のそれがいくつになるかは,分からない。
 ただ一つ言えることは,携帯電話市場の参加者は,パソコン業界のようにOSの普及度を背景にして,一つの企業が広範に市場をコントロールする姿を望んでいない,ということだ。また,それがLiMo設立の目的でもある。パソコン業界のように一つのプラットフォームに収斂することはないだろう。