図1 1〜38番までの研究開発目標と達成状況。
図1 1〜38番までの研究開発目標と達成状況。
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図2 39〜75番までの研究開発目標と達成状況。
図2 39〜75番までの研究開発目標と達成状況。
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 NHK放送技術研究所(NHK技研)は,2005年に掲げた2008年の研究開発目標「NHK放送技術研究所『75のお約束』」の達成状況を,「平成20年度 技研公開」(2008年5月22~25日開催)で明らかにした(Tech-On!関連記事12)(関連記事1,2)。75のテーマのうち,12件は「期待以上」,43件は「達成」,15件は「達成途上」である。「断念・中止」は4件,1件は「共同研究に移行」となった(図1,図2)。

 期待以上の成果を得たとして,として説明員が例に挙げたのが,「スーパーハイビジョンを300Mビット/秒以下で伝送するための圧縮装置を開発します」(番号:38)である。現在, NHK技研が「スーパーハイビジョン」と呼ぶ7680×4320画素の映像を,圧縮技術の改善によって,118Mビット/秒で伝送できるまでになった。

 断念・中止した4件は,「ハイビジョン伝送可能なアドホックネットワークシステムを試作します」(番号:10),「同一周波数で異なる場所から基地局に複数のハイビジョン映像を伝送するシステムを開発します」(番号:18),「互換性を保ちながらハイビジョンと標準テレビを地上デジタル1チャンネルで放送可能にします」(番号:37),「100円玉サイズ(0.85インチ)で20GB(Gバイト)以上のハード・ディスクを試作します」(番号:63)である。中止した理由はさまざま。例えば63番の場合,フラッシュ・メモリなどの大容量化によって,目標の意義が薄らいだため中止したという。ただし,ハード・ディスクの大容量化を断念したわけではなく,垂直磁気記録による記録密度の向上について研究を進めている。

 「共同研究に移行」したのは,「電子ホログラフィのための実写動画入力装置を試作します」(番号:28)である。この装置はスーパーハイビジョンの先に実現が求められる技術のため,研究所内部だけでなく,外部の「情報通信研究機構(NICT)」と共同で研究することにした。具体的には,「スーパーハイビジョンの導入を想定しているのが2025年。ここからさらに10~20年先の実用化を念頭に置いている」(説明員)という。