今回のスピーカーを筒状に丸めたもの。
今回のスピーカーを筒状に丸めたもの。
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 NHK放送技術研究所は2008年5月22~25日に開催した「NHK技研公開 2008」で,フレキシブルな超薄型スピーカーを出展した。NHKが開発中の「スーパーハイビジョン」用家庭向け音響機器への応用を目指しているという。

 この超薄型スピーカーは,0.3mm厚のエラストマーから成る薄膜を,PDOTと呼ぶ導電性樹脂で両側から挟み,大面積のコンデンサとしたもの。エラストマーは半透明なゴムの一種で,伸縮性に富む。

 このコンデンサに,変調した電圧を印加すると,コンデンサの電極間の電気的引力によってコンデンサの厚みが伸縮し,その振動が音となる。音域は450Hz~20kHz以上で,一部の低音を除く人間の可聴域の多くをカバーするという。

 NHK技研は,2007年のNHK技研公開でもフレキシブル・スピーカーを出展していた。前回のスピーカーは,電極で挟む樹脂に圧電性を備える「ポリフッ化ビニリデン」を利用し,変調した電圧の印加によって樹脂自身が伸縮する仕組みだった。一方,今回のエラストマーは圧電性を持たないという。材料と振動の仕組みを変えた理由は「前回(2007年)の圧電性樹脂は非常に高価だが,このエラストマーは格安。その分,低コストで作れる」(説明員)。ただし,2007年のスピーカーの駆動電圧は最大30Vだったのに対し,今回は同1500Vと非常に高くなっている。