インドの製造力:中台韓に次ぐ新たな脅威に

 薄膜Si型の製造ラインが立ち上がれば,Moser Baer Photo Voltaicの薄膜Si型の年間生産能力は40MWとなる。大雨の影響で建屋の建設が遅れたために若干スケジュールがズレ込んでいるが,製造装置の搬入と立ち上げは予定通り進んでいる。製品出荷は2008年6月ごろになるという。その後,タンデム構造にして変換効率を高めれば,年間生産能力は60MWまで増える。

 このほかMoser Baer Photo Voltaicでは,結晶Si型の年間生産能力を現在の40MWから2008年3月末までに80MWに高める。現在,結晶Si型の製造ラインを125mm角基板対応から150mm角基板対応に変更したり,処理時間が長い熱処理工程の製造装置の数を増やすなどして増産対応を進めている。

 さらに,新規ラインの設置のために新たな建屋を建設する計画があるほか,現在の製造拠点のノイダとは別に,インド南部のチェンナイに新たな製造拠点を建設する計画もある。チェンナイでは薄膜Si型を中心に,2009年にも製造を開始する。関連メーカーも製造拠点に集め,太陽電池の一大生産拠点とする。シャープの太陽電池製造拠点と比較しながら,「ノイダが葛城で,チェンナイが堺」(同社 President and CTOのG.Rajeswaran氏)と表現する。こうした増産の結果,2010年に年間生産能力500MWに到達する。

 Moser Baer Photo Voltaicは,増産計画に合わせて技術者も増やしている。親会社の光ディスク・メーカーから大量に技術者を配置転換するとともに,インドの老舗太陽電池メーカーや欧米企業に勤めるインド出身の技術者を次々と採用している注)

注)親会社の光ディスク・メーカーには,研究開発を担当する技術者から,製造装置のメンテナンス要員,品質管理担当者などさまざまな人材がそろっている。

欧米向けにメキシコに工場設立

 Moser Baer Photo Voltaicよりも若い,2007年8月にモジュール生産を開始したばかりのSolar Semiconductorも,既に増産を計画している。生産開始時の年間生産能力は30MWだったが,需要が多いために,2008年に一気に130MWに高めることを決めた。現在の工場があるインド中部のハイデラバードに,新たな工場用地も確保している(図6)。

次々と新たな太陽電池メーカーが出現

 Solar Semiconductorの主な市場は北米と欧州である。そのため,両市場に近いメキシコに新たな工場を建設する計画もある。メキシコ工場のモジュール年間生産能力は60MWで,2008年半ばにも出荷を始める。北米と欧州に加えて,南米にも販路を広げる計画である。

 Solar Semiconductorは,現在モジュールの生産を事業の中心としている。それは「短期間にブランドを確立するため」(同社 Vice PresidentでSales & Marketingを担当するNava Akkineni氏)の措置である。今後は,さらなる事業拡大を目指して,モジュール以外の事業にも手を広げるもようである注)

注)将来技術として,三洋電機が製品化している「HIT(Heterojunction with Intrinsic Thin Layer)」太陽電池のようなヘテロ構造の研究にも取り組んでいるとした。

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