地上デジタル放送(地デジ)などの録画機向けの新しい著作権保護ルール「ダビング10」への運用切り替えが,当初予定の「2008年6月2日午前4時」から,延期される公算が高くなった。延期の幅は決まっていない。

 運用切り替え実施の合意に向けて関係者が集まるはずだった2008年5月23日の会議が中止になり,運用切り替え期日(6月2日)までに,関係者の合意が得られるめどが立たない状態になっている。5月29日に行われる予定の総務省「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」(デジコン委,情報通信審議会の下部組織)の第38回会合で,延期が正式に決まる見込みだ。

フォローアップWGの開催が中止

 ダビング10は無料デジタル放送を家庭などで録画して楽しむ際の新ルールである。ダビング10対応機は1回の録画に対し,9個までの複製を作れるようになる。録画データを別媒体に移動する「ムーブ」しか許さない現行の「コピーワンス」の制限を緩和して利便性を高め,地デジ普及を加速する狙いで,デジコン委が導入を決めた。

 ダビング10は,2007年8月に公開された情報通信審議会の第4次中間答申「地上デジタル放送の利活用の在り方と普及に向けて行政の果たすべき役割」(総務省のプレスリリース)に基づき,デジコン委における合意のうえで実施される手はずになっていた。

 デジコン委は2008年4月11日に開催した第35回会合で,ダビング10実施に向け,合意を形成する条件を確認する「フォローアップWG」の設置を決めた。慶應義塾大学の中村伊知哉氏を主査に,権利者とメーカー,放送事業者,消費者から計11名の委員を選んだ。実施予定日まで2カ月を切っても「2008年6月2日午前4時」という運用切り替え予定が確定に変わらないことにしびれを切らしたメーカーの委員の発言がきっかけだった。