なお,榊原氏や土井氏が論拠とした産構審の報告とは,1999年2月に公表された「コンテンツ取引の安定化・活性化に向けた取り組みについて ―産業構造審議会知的財産政策部会デジタルコンテンツ小委員会及び情報産業部会基本問題小委員会デジタルコンテンツ分科会合同会議報告書―」と思われる。

 LEに懐疑的なメーカー系の委員に対し,生活経済ジャーナリストの高橋伸子氏や東京都地域婦人団体連盟の長田三紀氏など消費者系の委員からは,主に現行のB-CAS方式への疑問の声が出た。「以前,指摘したように,(B-CAS方式は)無反応機が既に存在するうえ,社会的コストが大きいという問題がある」(高橋氏),「(B-CAS方式は)消費者にとって負担感が大きい」(長田氏)。

 椎名氏やホリプロの堀義貴氏など権利者系の委員からは,デジタルによる複製が大量に出回る事態を憂慮し,B-CAS方式をあきらめ,一刻も早くLEを推進するべきとの意見が出た。「産構審の結論に縛られることを権利者として明確に反対する。B-CAS方式はテレビを見るための仕組みとしては複雑すぎるし,無反応機の登場を考慮すると抑止力として機能しているとは思えない。LEをぜひ進めてほしい。刑罰を課すことはやはり最も優れた抑止力になる」(椎名氏),「権利者は大量のコピーが出回る事態を憂慮しているだけ。いちばん懸念していた事態が今現在,出来るようになっている」(堀氏)。