フリーオのような機器は権利保護情報に反応しないため「無反応機」と呼ばれる。フリーオの製造メーカーはB-CAS社とカードの支給契約を結んでいるわけではないため,製造や販売に関してその違法性を問うことは難しい。このため,「B-CAS方式によるTEは既に有効に機能しない状況になっている」(委員の一人である実演家著作隣接権センターの椎名和夫氏)との認識が権利者系の委員などの間にある(Tech-On!関連記事3)。

 無反応機が登場する可能性は以前から予想されていたが,実際にフリーオが登場したことで,「デジタル放送波に多重されるコピー制御信号への無反応機」への対策が必要との意見がデジコン委で出された。そこでエンフォースメントの維持と方式自体の再検討が,傘下に設けた技術検討WGに託された経緯がある。

通産省の審議会では「法的規制は避ける」との結論が

 今会合では,技術検討WGの検討結果の報告という形で,デジタル放送推進協会 技術委員会 委員長でフジテレビの関祥行氏から,無料の地上デジタル放送に対して,TEとLEを適用する場合の長所,短所を比較した資料が提出された(PDF形式の配付資料)。

 これに対し,日立製作所の田胡修一氏からは「(暗号化を施さない)LEは,コンテンツ自体の保護レベルが下がるという問題がある」との意見が出された。

 今回のデジコン委にオブザーバーとして参加した松下電器産業の榊原美紀氏や,委員の一人である東芝の土井美和子氏からは,「以前に行われた(旧通産省の)産構審の議論で,無反応機器に対する規制は行わないとの結論が出ている。また,法的な対処をするとなると,受信機を製造するメーカーだけでなく,多くの企業が関係することになり,関係省庁やそうした企業も含めて意見を聞いて慎重に進めるべきではないか」(榊原氏),「産構審の報告では『結果として管理技術の進歩を止めてしまう恐れがある』と言っている。資源のない日本が発展できたのは技術進歩のおかげ。技術的発展の可能性を閉ざさないという観点を忘れずに審議を進めてほしい」といった意見が出た。