図1:三菱電機の執行役社長 下村節宏氏
図1:三菱電機の執行役社長 下村節宏氏
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図2:2008年度の実績見通し。下村氏は懸念事項として鉄鋼の値上がりと円高を挙げる。このうち円高に関しては対前年比で約490億円の影響を織り込んでおり,地域によっては取引通貨をドルからユーロに変更するなどの対策をするという。
図2:2008年度の実績見通し。下村氏は懸念事項として鉄鋼の値上がりと円高を挙げる。このうち円高に関しては対前年比で約490億円の影響を織り込んでおり,地域によっては取引通貨をドルからユーロに変更するなどの対策をするという。
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 三菱電機は2008年5月15日に記者発表会を開き,今後同社の環境関連事業が年率8%のペースで成長し,2015年度には同事業の売上高が約1兆3000億円に達するとの見通しを発表した。各事業部門が試算した数字の合計として発表した。2007年度における同事業の売上高は約7000億円で,売上高全体(約4兆498億円,Tech-On!関連記事1)の約17%だった。

 三菱電機の環境関連事業は,太陽光発電システム事業や空調機器などのヒートポンプ応用事業が主力となる。このうち太陽光発電システム事業は,世界最高のセル変換効率を持つ多結晶Si型太陽電池(Tech-On!関連記事2)といった同社の強みを活かせる分野であるため,今後成長の軸にしていく考えだ。昨年度までの課題であったシリコンの調達に関しては,供給先との関係強化や供給先の数を増やすなどの手段により,すでに解決のめどをつけたとする。同社は,2008年3月に太陽電池モジュールの生産量を現在の150MWから2012年度には500MWまで増やすと発表している。(Tech-On!関連記事3)。

携帯電話機事業の技術者は,車載機器やFAなどに

 2007年3月に撤退を表明した携帯電話機事業に関しては「いろいろな事業分野で,事業力や製品開発力を強化するためのリソースが不足していた」(三菱電機の執行役社長 下村節宏氏)と振り返り,主力分野での技術者不足を解決するという前向きな意味もあったと強調した。同事業に関わっていた技術者の再配置先としては車載機器事業やFAシステム事業などが中心になるという。

 車載機器事業に関しては,ETCや道路交通情報通信システム(VICS),車車間通信などに使用される機器が携帯電話機と同様に“移動体のネットワーク”のなかで使用されるため,技術的な共通点が多いという。さらに,そういった機器を高密度に実装する際などに,携帯電話機の開発に使用した技術を応用できるとする。

 FAシステム事業では,工場内の情報通信量が増えてきているという背景がある。多品種少量生産が求められるなかで,生産量や製品の種類などといった情報が以前よりも多く通信されるためである。そのため,工場内で発生するノイズに強いなど,より信頼性の高いネットワークの構築が求められ,携帯電話機事業での経験を生かせるという。