Qualcomm社 COOのSanjay K. Jha氏
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現行技術の拡張に関する話題が中心だった
現行技術の拡張に関する話題が中心だった
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 米Qualcomm Inc.は2008年5月15日,都内で記者説明会を開催し,同社のモバイル機器向け半導体事業について説明した。なかでは次世代の移動体通信方式(いわゆる3.9G)について,同社の最高執行責任者(COO)であるSanjay K. Jha氏が将来の見通しについて語り,「次世代のOFDMA利用の移動体通信技術に関しては,LTEが主流になる」との認識を示した。

UMBは多くを語らず

 Qualcomm社は,OFDMAを利用する次世代移動体通信方式に向け,3GPP2で標準化された「UMB(ultra mobile broadband)」と呼ぶ技術を推進し,対応チップセットの開発も進めていた。しかし今回の記者説明会では,UMBに関する説明はほとんど無く,「開発中である」とするにとどまった。同様にOFDMAを利用する技術としては,3GPPが標準化作業中のLTEがある。NTTドコモや米Verizon社など,LTEの採用を表明する携帯電話事業者は多く出現している一方で,UMBの採用を表明する事業者の話題はほとんど見られない状況で,Jha氏も「UMBは事業者からの採用の検討を待っている段階にある」との認識を示した。Qualcomm社自身も,LTE対応の携帯電話機向けチップセットを2009年第2四半期に出荷する予定だ(Tech-On!の関連記事)。

 Qualcomm社が強力に推進し,方式策定を進めたUMBの利用が広がらないというのは,同社にとって不利な状況にみえる。しかし同社COOのJha氏は,問題ないという。「LTEへの移行は時間がかかる。急には進まない。まずは現行CDMA技術と組み合わせたマルチモードのサービスになる。現行CDMA技術自体も拡張を続けている。CDMAの技術が,これからも主流であり続ける」(Jha氏)。OFDMA利用の次世代技術が登場しても,現行のCDMA技術が併用されるため,Qualcomm社の事業には大きな影響はないとの見方だ。Qualcomm社はLTEに関しても,同社がこれまで進めていたのと同様のマルチモード・ライセンスの枠内に取り込む方向である。

 LTEに関しては,フランスAlcatel-Lucent社,スウェーデンEricsson社,NECなど7社が,ライセンスの枠組み作りで合意している(日経エレクトロニクスの関連記事)。7社は,LTEの特許ライセンスの仕組みとして,「携帯電話機は販売価格の10%未満」,「ノート・パソコンは10米ドル未満」という目安を提案し,Qualcomm社のような特許ホルダーに対して枠組みへの参加を呼びかけていた。

 Qualcomm社のJha氏は,こうしたLTEのライセンスの枠組みについては,「まだLTEの標準化が終了していないので,ライセンスの料率を議論する段階ではないと考えている。また当社はこれまで,『FRAND(feare reasonable and non discriminatory terms)』のポリシーに基づき,相対でのライセンス契約を中心にしてきた」(Jha氏)と,枠組みへの参加には慎重な立場を示した。