ソニーは,2007年度(2007年4月~2008年3月)の連結業績を発表した(発表資料)。売上高は前年度比6.9%増の8兆8714億円,営業利益は前年度の約5.2倍となる3745億円だった。営業利益には,旧本社跡地の一部の売却益607億円などの一時的な利益や円安の影響も含まれているものの,基本的にはエレクトロニクス分野やゲーム分野での売り上げ増加が牽引したとする。

 特に好調だったのが,過去最高の売上高,営業利益となったエレクトロニクス分野である。売上高は前年度比8.9%増の6兆6138億円,営業利益は同121.8%増の3560億円だった。同分野での営業利益率は5.4%となり,2005年に発表した中期経営方針で目標として掲げた4%を「大幅に上回った」(ソニー執行役EVP兼CFOの大根田伸行氏)。パソコンやデジタル・カメラが増収増益に貢献したとする。液晶テレビについては減益となった。売上台数は前年度の630万台から今年度は1060万台と大幅に伸ばして増収となったものの,価格が下落したり,液晶パネル不足を解消するために空輸するといった手段を採ったりしたためとする。システムLSIは「プレイステーション 3(PS3)」向け製品の拡大などにより増益となった。

 ゲーム分野は,売上高が前年度比8.9%増の1兆2842億円,営業損失は1245億円で,前年度の2323億円の赤字に比べて赤字幅を減らした。PS3の出荷台数が同156%増の924万台と増えたことが増収につながったとする。さらに,PS3のハードウエアのコスト削減やゲーム・ソフトウエアの増加により損益を改善できたという。「プレイステーション・ポータブル(PSP)」の売上台数は新型品が好調で同46%増の1389万台,「プレイステーション 2(PS2)」は前年度に比べて7%減少の1373万台だったものの,利益に貢献したとする。なお,PS2は東欧や中東向けが好調だった。

 エレクトロニクスやゲーム以外の分野については以下の通り。映画分野の売上高は前年度比11.2%減の8579億円,営業利益は同26.5%増の540億円。金融分野の売上高は同10.5%減の5811億円,営業利益は73.1%減の226億円,その他の分野の売上高は同7.6%増の3822億円,営業利益は73.9%増の502億円である。

2008年度は全体で営業利益率5%に

 ソニーは,2008年度の連結業績に対する見通しについても発表した。売上高は前年度比1%増の9兆円を見込む。営業利益は,エレクトロニクス分野では米ドルに対する円高の影響により減益になるも,ゲーム分野や金融分野の増益により,同20%増の4500億円になると予想する。売上高営業利益率5%を目指す。なお,設備投資費は同28%増の4300億円とする。このうち,イメージ・センサなどの半導体に対する投資は1100億円である。研究開発費は同4%増の5400億円とする。

 液晶テレビについては,低価格のいわゆるエントリー・モデルから中位機種に注力し,売上台数を1700万台に増やしたり,コストを削減したりすることで黒字化を図る。コスト削減策として(1)エントリー・モデルから中位機種に対して標準的な液晶パネルを用いる,(2)シャーシを従来の5種類から2種類に減らす,(3)フィルムなどの部材についてもコスト削減を進める,といった具体策を挙げた。従来は同社専用の液晶パネルにこだわりを持っていたが,エントリー・モデルから中位機種については「標準パネルを使っても差異化できる商品を作っていくように方針を変えた」(大根田氏)とする。コスト競争力を向上させ,低価格機種が増えても収益を圧迫しない体制作りを狙う。

図 会見に臨むソニー執行役EVP兼CFOの大根田伸行氏。エレクトロニクス分野における好業績の理由について,「エンジニアの独りよがりではなく,消費者の視点での製品作りができるようになってきた。消費者が望む製品をタイムリーに出せる体制になってきた」と説明した。
図 会見に臨むソニー執行役EVP兼CFOの大根田伸行氏。エレクトロニクス分野における好業績の理由について,「エンジニアの独りよがりではなく,消費者の視点での製品作りができるようになってきた。消費者が望む製品をタイムリーに出せる体制になってきた」と説明した。
[画像のクリックで拡大表示]