湯本氏の講演資料から。なお湯本氏は,KDDI 理事で,コンシューマ技術統括本部 モバイルネットワーク開発本部の本部長である
湯本氏の講演資料から。なお湯本氏は,KDDI 理事で,コンシューマ技術統括本部 モバイルネットワーク開発本部の本部長である
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KDDIは,将来の周波数再編に向けて,端末のトライバンド化を進めている。現行800MHz帯に加え,2GHz帯,そして将来的に利用する再編後の800MHz付近の周波数帯(講演では『新800MHz帯』としている)へ対応していく方針だ
KDDIは,将来の周波数再編に向けて,端末のトライバンド化を進めている。現行800MHz帯に加え,2GHz帯,そして将来的に利用する再編後の800MHz付近の周波数帯(講演では『新800MHz帯』としている)へ対応していく方針だ
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「3.9Gの候補はLTEとUMB。どちらにするかは,大体見えてきた。導入のポイントは時期である。いつ導入するかで,取り組みは異なってくる」――。

 KDDI モバイルネットワーク開発本部 本部長の湯本敏彦氏は,2008年5月13日からパシフィコ横浜で開幕した「ワイヤレス・テクノロジー・パーク 2008」で,「KDDIにおける次世代に向けた取り組み」と題する講演を行った。講演では,2010年ころのサービス開始が期待される次世代移動体通信規格(いわゆる3.9G)のサービスに関して,少しだけ時間を割いて言及した。

「LTEもUMBも,要求条件を満たす」

 まず湯本氏は,ここ数年のネットワークのトラフィック上昇カーブを示しながら,「今後もトラフィックは伸びていくだろう。今までのペースから見ると,10~20倍伸びてもおかしくない」と,今後もトラフィック上昇が続くとの見方を示した。次世代通信方式には,こうしたトラフィック上昇に対応する狙いで,取り組んでいくという。その上で,導入する方式の要求条件として,以下の五つの要素を示した。それは,1)インフラ・コストの抑制,2)ビット単価の低減,3)通信速度の向上,4)低遅延,そして5)接続時間短縮である。「トラフィックが上昇する以上,データ通信速度も10~20倍の高速化が求められる。我々がビジネスを進めていく上では,ビット単価も現状の1/10程度を目指さなければならない」(KDDIの湯本氏)。

湯本氏は,次世代方式の候補となるLTEとUMBは,どちらもこれら要求条件を満たしているという。KDDIの社内的には既に,どちらを選択するかについて決まりつつあるとした。「おおむね方向性は見えている。もちろん,マーケットの状況を見ながら決めるというスタンスだ」(KDDIの湯本氏)。

湯本氏は,いずれの方式を選択するにしろ,導入のポイントは「時期」にあると指摘する。「どのタイミングで導入するかによって,利用できる周波数帯や帯域幅が異なってくる。例えばすぐに導入するということになれば,2GHz帯を使うことになろう。別の周波数を使うということであれば,1.5GHz帯も候補になる。もしも,しばらく導入を遅らせてもかまわないということであれば,2012年に再編される新800MHz帯が候補に上る」(KDDIの湯本氏)。

KDDIは現在,現行の800MHz帯と2GHz帯,そして2012年に周波数が再編された後に利用する新800MHz帯の3種類の周波数バンドに対応したトライバンド型端末への移行を進めている。次世代方式への導入が2012年以降であれば,この再編後の800MHzも使ったLTEサービスが可能になるとの見方だ。どの周波数帯を利用するかで,セル設計などサービスの枠組み作りにも大きく影響してくる。3.9Gの伝送方式の選択だけでなく,いつからサービスを開始するという点も,今後携帯電話事業者が戦略的な判断が迫られる事項になりそうだ。