VAIO type X以外にも全チャンネル録画機はあります。パソコンのハードウエアにLinuxを載せて,全チャンネル・レコーダーを作るというアイデアだって誰でも考えると思いますよ。要するにアイデアはありきたりなんです。

PTP 代表取締役社長の有吉昌康氏
PTP 代表取締役社長の有吉昌康氏 (画像のクリックで拡大)

 「ユーザーのため」を真剣に考えていくと似てしまうこともあります。例えば,我々のユーザー・インタフェース(UI)のメイン画面,アイコンがクルクル回るようなデザインなのですが,これは米Apple, Inc.の「Front Row」(2005年10月に発表した「iMac G5」で始めて搭載した)に似ているとユーザーからよく言われます。でも我々の方が先なんです。あまり知られていないんですけどね(笑)

米Apple社の「Front Row」と似たコンセプトのメイン画面
米Apple社の「Front Row」と似たコンセプトのメイン画面 (画像のクリックで拡大)

 我々がこういう形にしたのは,リモコンの使い勝手にこだわった結果です。リモコンを使ってユーザーが何かを選択するという動作をする場合は,横方向に指を動かす方が使い勝手が良くなります。リモコンを操作する親指は,左右に振るのは楽ですが,縦に上下に動かすのはやりにくいからです。だから,リモコンの操作ボタンは親指で操作しやすいように横に並べ,操作に合わせて画面のアイコンが横方向に動く。我々はこういう風に考えて,リモコンとUIを作りました。Apple社の技術者も同じ結論に達したのではないでしょうか。

SPIDER PROのリモコン。ボタンの数を減らすことを重視した。左側の側面に置いた5個のボタンは,ユーザーを識別するためのもの
SPIDER PROのリモコン。ボタンの数を減らすことを重視した。左側の側面に置いた5個のボタンは,ユーザーを識別するためのもの (画像のクリックで拡大)

 ちなみにこのリモコンはSPIDER PRO専用にイチから作りました。家電メーカーがよく使っているOEMメーカーの標準品なら安いんですけどね。あのようなボタンがたくさんあるリモコンではどうやっても使い勝手が良くならない。だから嫌だったんです。

 SPIDER PROのすべての機能は,ユーザーの反応を見ながらトライ&エラーで追加したり,改良を加えたりして作り上げています。最初は約30世帯のユーザーに試作機を配るところから始めました。我々の強みは,こんな風に一つ一つ考え,検証しながら,実際に使い勝手が良くて,使って楽しい全チャンネル録画機を作り上げた点にあると思っています。「ネット連携型の全チャンネル録画機」というコンセプトではなく,情報提供サービスも含めて実際に動くSPIDER PROが今,手元にあることが最大の強みです。

——SPIDER PROの基本的な仕組みを教えてください。

籠屋氏 録画機能は基本的にずっと録画をし続けます。HDDの空き容量がなくなったら過去の分から順に消していくという仕組みです。ユーザーが積極的に保存しておきたい番組は,HDDに保存したり,DVDに焼くことができます。