目次-テクノロジーが変わる
日経エレクトロニクス2005年6月20日号,PP.61-65から転載。所属,肩書き,企業名などは当時のものです。

 2010年6月20日,日曜日。ついに新車が我が家に届いた。パワー・トレーンは,排気量1.5lの直列4気筒エンジンに出力40kWのモータを組み合わせた最新のハイブリッド・システム。燃費は40km/lを誇る。もちろん,ヘッドランプは今や高級車の象徴となった白色発光ダイオード(LED)だ。安全面の装備もバッチリ。ミリ波レーダにカメラ・システムを組み合わせることで検知精度を高めた衝突軽減システムや,ステアリングやブレーキ,アクセル,サスペンションを自動的に統合制御するシステムを標準装備している。車内では地上デジタル放送が視聴できるし,通信モジュールを内蔵しているから最新の渋滞情報を加味したルート検索だって可能だ――。

 クルマの電子化がまだまだ止まりそうにない。環境面では,CO2排出に対する規制が年々強まり,燃費に優れたハイブリッド車や電気自動車の販売台数が増加しそうだ。安全面では,自動車による事故そのものを減らす取り組みが本格的に求められ,複数のセンサを使って事故を回避するシステムの採用が進む。快適性については,他社との差異化を図るため,さまざまな電装品を連携させたシステムや,通信技術との融合を図った新しいシステムが2010年に向けて続々と実用化されそうだ。

迫る規制強化の波
燃料電池まで待てない

 自動車メーカー全体が大きな問題として抱えているのが,環境負荷低減への対応である。特に近年,CO2排出規制への対応が急務となり始めた。過去には米国で自動車排ガス中のHC(炭化水素)やCO(一酸化炭素),NOX(窒素酸化物)の排出量を5年間で90%削減することを規定した「Muskie Act」などにより,CO2以外の環境負荷への対応が強く求められたが,現在は温暖化ガスであるCO2の排出削減が大きな課題となっている。

 実際,欧州では規制強化に向けて動きだした。乗用車1台当たりのCO2排出量を2008年に平均140g/km以下に,2012年には平均120g/km以下にすることになりそうだ。140g/kmという値は約16km/l~17km/lの燃費が必要となり,2012年の120g/kmという値は約20km/lの燃費を必要とする。これは排気量1lクラスのガソリン車並みの燃費である。同じく世界的に厳しい規制を課すことで知られている米国カリフォルニア州の規制も欧州の規制と同様な方針で,2016年までにCO2排出量を128g/kmに削減する中期方針が出ている(図1)。