自動車開発と車載半導体,噂とは少し違っていた:その2
「車載製品の担当になって,いろいろなことを学んだ」という半導体メーカーのエンジニアやマネージャは多い。半導体や電子機器を専ら担当してきた筆者もそれは同じである。車載半導体特集(NIKKEI MICRODEVICESの2007年11月号に掲載)の取材の過程で,噂とは少し違う事実をいくつか学んだ(Tech-On!関連記事)。
例えば,自動車の開発期間。試作車を何度も作り,量産開始まで2〜3年はかかる。こう思っていた。ある半導体メーカーを取材したときに「自動車の開発期間はASIC(application specific integrated circuit)よりも短くなっている」と聞いた。本当か。
自動車メーカーでの取材で,それを確かめることができた。「いまでもコンセプトの新しい車の開発には時間をかけている。一方で,小規模な変更の場合は,デザインの確定から量産開始までの期間は最短で10.5カ月だった」(日産自動車)。CADの導入などでコンカレント・デザインが可能になったり,試作車なしでもCAD上で多くの項目を検証できるようになったことが,開発期間短縮の背景にある。
二つ目の例は,自動車メーカーによる先端半導体の採用。「自動車メーカーは信頼性の確保などのために技術的に枯れたチップ,具体的には,枯れた半導体プロセスで作るマイコンしか使っていない」というように,取材前は聞いていた。いかにもありそうである。しかし,事実は少し違っていた。
「ワイヤを使った制御を電子制御におきかえる」という車の電子化の過程では,制御に向いたマイコンが多数使われた。この過程では,コスト・信頼性の面から,枯れた半導体プロセスで作るマイコンが選ばれた。
ここ数年で車の電子化は「機械系を置き換えるフェーズ」から,「電子の力で新たな機能を車に付加するフェーズ」に移った。例えば,車に取り付けたカメラの画像を使って,安全な走行を支援する。これには,高性能な画像処理チップが欠かせない。こうした画像処理チップは,デジタル家電に搭載されているとの同じような複雑なSoC(system on a chip)である。
ある半導体メーカーは言う。「デジタル家電では新規開発されたSoCがすぐに機器に載り,市場へと出て行く。一方,新規開発された車載SoCは,自動車メーカーの厳しい検査の後でないと,自動車に載って市場には出ない。市場に出る段階では自動車向けが1世代遅れることになるが,開発段階ではデジタル家電向けも自動車向けも同じ先端チップを設計している」。














