モーション検知,MEMSセンサーとカメラのどちらが良いか
携帯機器の動きを検知してユーザー・インタフェースに利用する。任天堂のゲーム機「Wii」やNTTドコモの「DoCoMo2.0」対応の携帯電話機,米Apple Inc.の携帯型機器やマルチメディア・プレーヤで既に実用化されている。その手段として,MEMSによる加速度/角速度センサーで実現する手法と,CCD/CMOSカメラなどで取り込んだ周囲の画像の変化から機器の動きを把握する手法がある。これら両方の手法の開発経験のある臼田総合研究所の臼田裕氏に,両者の特徴について聞いた。
臼田総合研究所の臼田裕氏は,今春,7軸慣性センサー(3軸加速度センサー,2軸角速度センサー,2軸地磁気センサー)を搭載したモジュール「知能センサー(UBN-800)」を発売した。このモジュールを携帯電話機などの機器に搭載すると,ユーザーによる機器の動きを検知できる。しかもユーザーの意思にできるだけ沿った情報として信号を出力できるという。
このモジュールを使って,2000型といった大画面を2型といった小型ディスプレイで見る応用を実現できる(関連記事を『NIKKEI MICRODEVICES』2008年5月号に掲載予定)。携帯電話機のディスプレイには,大画面の一部を切り出したように表示できる。これを右に動かすと,右側にスクロールして右側の画面が見えてくる。このようにすることで画面全体を見ることができる。手前に引いたり奥へ押し出したりする動きで,拡大・縮小も可能である。
このようなモーション・センシングの手法としては,慣性センサーを使う以外に,携帯電話機に搭載したカメラの画像を使う手法がある。一般には,カメラ画像の変化から携帯電話機の動きを認識することができると,新規にハードウェアを追加しないですむため低コスト化できる。今後,モーション・センシングにおいて,こうした手法が主流になる可能性は十分にある。実際,携帯電話機やパソコンの音声・通信処理部の歴史を振り返ると,マイコンの処理能力の向上に伴ってソフトウェア処理が主流となってきた。
臼田氏が,カメラによる手法を採用しなかったのには理由がある。同氏は,カメラによる画像処理手法には速度面での限界があると指摘する。この手法では,一般に1/30秒ごとに画像を取り込み,それぞれの画像に対して処理を施す。どんなに高速のプロセサを使っても1秒に30回以上の信号は取り込めず,正確に動きを捉えられない。
これに対して,慣性センサーを使うと,毎秒数千〜数万といった信号を取り込める。動きをより正確に認識できるようになる。臼田氏は,2005年までソニーに在籍しており,ここではユーザーの手の動きをカメラで捉えて,それをユーザー・インタフェースに利用する研究開発をしたことがある。そうした経験から,カメラによる手法の限界を感じ,慣性センサーによる手法を採用したという。
同氏は,ソニー在職中の2000年ごろにMEMSによる慣性センサーと出会った。日立金属が開発したMEMSセンサーのサンプルを同氏のところに見せに来たという。そこでMEMSセンサーの可能性の大きさに確信し,MEMSセンサーによる手法で開発を進めてきた。同氏は,ソニーの高級品ブランド「QUALIA」で欠番となっている「003」(モバイル機器)の開発メンバーだったようである。「ソニー・ショック」でQUALIAの製品化の中止が決まるまで,同氏の考えた手法の開発を進めていた。今春に臼田総研が発売した知能センサーには日立金属の加速度センサーと地磁気センサーを使っている。角速度センサーについては明らかにしていない。













