TopSEのカリキュラム(概要)。
TopSEのカリキュラム(概要)。
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ソフトウエア技術者に加えて,ソフトウエア工学の研究者も育成。
ソフトウエア技術者に加えて,ソフトウエア工学の研究者も育成。
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 国立情報学研究所(NII)は,ソフトウエア工学の教育・研究を行う機関として「先端ソフトウェア工学・国際研究センター」(略称:GRACE(global research in advanced software science and engineering)センター)を設立した(GRACEセンターのサイト)。NIIは,2005年9月よりソフトウエア開発の技術リーダーとなる人材を育成するプロジェクト「トップエスイー(TopSE)プロジェクト」を実施し,ソフトウエア工学分野で先端的な教育を行ってきた。今回のGRACEセンターはこのTopSEプロジェクトを包含する組織となるほか,ソフトウエア技術者だけでなく同分野の研究者の育成も視野に入れる。

 TopSEプロジェクトでは主に企業のソフトウエア開発者に向けて,「形式仕様記述」「ソフトウエアパターン」「モデル検査」「要求分析」「アスペクト指向開発」「コンポーネントベース開発」といったソフトウエア工学の先端トピックを,1年半に渡って講義している(Tech-On!関連記事1)(Tech-On!関連記事2)。講師はNIIの教授,企業の研究者などである。現在は3期目に入っており,これまでに60人程度の修了者がいる。

 TopSEプロジェクトは文部科学省の「科学技術振興調整費」の予算により,受講生に対して無償で提供してきた。現在の3期目でこの予算の期間が終了することを受け,GRACEセンターではNIIが独力で引き続きTopSEプロジェクトを実施する。ただし,2008年秋に募集を開始する4期目からは授業料は有償,期間は1年間になるという。

 GRACEセンターでは,TopSEプロジェクトの実施に加えて,新たに研究者の育成も行う。これをNIIは,TopSEと対にして「TopRE(research engineer)」と呼んでいる。TopSEでは,受講者が所属する企業内の実践的なテーマについて研究する「修了制作」という課題が設けられているが,こうした教育活動の中で,「そのまま博士論文としても通用するような修了制作の論文が出て来た。企業エンジニアである受講生がこうした成果を基にして,博士号を取得できるような環境を作っていきたい」(GRACEセンター長で東京大学教授の本位田真一氏)という。

 GRACEセンターは,今後,上記のようなソフトウエア工学分野の教材の拡充にも注力していく。具体的には,文部科学省の「先導的ITスペシャリスト育成推進プログラム」により,TopSEプロジェクトで用いた教材,および講義風景の動画配信などを,連携する教育機関などに提供していく予定である。