米Verizon Wireless社と米AT&T Inc.は,連邦通信委員会(FCC)が3月20日まで実施した700MHz帯の周波数オークション(Tech-On!関連記事)で落札した周波数帯を使って提供するサービスの概要を明らかにした(Verizon Wireless社の発表資料AT&T社の発表資料)。

 両者に共通するのは第3世代携帯電話(3G)を拡張した通信方式の一つであるLTE(long term evolution)を採用して,高速な無線データ通信サービスを提供することだ(Tech-On!用語)。AT&T社については,同じく3Gの拡張技術の一つであるHSPA+を使ったサービスに導入する予定もある。

 Verizon Wireless社にとって,無線ブロードバンド・サービスを700MHz帯で提供することは,同社の従来の戦略の変更を意味する。アナリスト向けの電話会議で,Verizon Wireless社の親会社である米Verizon Communications Inc.,Chairman, CEOのIvan Seidenberg氏は「700MHz帯のライセンス取得は,我々のビジネス戦略を変身させるチャンスだと思っている」と宣言した。

 現在同社は主に,個人ユーザーに向けた音声通話サービスに注力している。だが700MHz帯を使う新規サービスを軸に今後は,機器に向けたデータ通信サービスを中核に据えた戦略に変更するという。「今後はデジタル・メディア・プレーヤーといった携帯型機器向けに無線接続を提供する」(Verizon Wireless社,CEOのLowell McAdam氏)。Verizon社は近い将来,米国の携帯電話機の普及は飽和するとみており,ビジネスをさらに拡大させるためには,ユーザー一人当たりの無線接続機器の保有数を増やす必要があると考えている。機器向けのデータ通信サービスを提供することで,これを実現し,成長を維持したいとの考えだ

 Verizon社が目指す戦略は,モバイルWiMAXを利用する米Sprint Nextel Corp.「Xohm」無線ブロードバンド・サービスのビジネス戦略と近い(Tech-On!関連記事)。ただし,Xohmサービスに関しては,Sprint Nextel社がXohmのサービス・エリアを全米に広げるために必要な資金を集められるかどうか,疑問視する声も業界で出始めている。